第8話 全裸の変態男は縄美女を装備した

「ナワデシバラさんの使用感を知りたいところだな」


「んぴょーっ!? んぴょーんぴょーんぴょーっ!!!」


「えっ!? いきなりどうしたんだ!? なんで叫んでいるんだよ!?」


「んぴょーんぴょーんぴょーんぴょーんぴょーっ!!!!!」


「な、なんだ!? もしかして、怒っているのか!?」


「んぴょーっ!!」


 ナワデシバラさんが勢いよく首を縦に振った。


「やはり怒っていたのか。なぜなのだろうか?」


「さっきの発言は、ちょっと変態的でシ~タよ!」

「私もそう思ったわヨ~」


「んぴょーっ!!」


 ナワデシバラさんが勢いよく首を縦に振った。


「そうだったのか!? そんなつもりはないぞ!? 『武器の使用感を知りたい』という意味で言ったんだぞ!!」


「んぴょーんぴょーんぴょーんぴょーんぴょーっ!!!!!」


「今度はなんだ!?」


「『紛らわしいことを言うな』と言っている気がしマ~ス」


「んぴょーっ!!」


 ナワデシバラさんが勢いよく首を縦に振った。


「分かった分かった。悪かったよ。機嫌を直してくれよ」


「んぴょー」


「許してくれたのかな?」


「そのようデ~ス」


「そうか。良かった」


 以後、気を付けないとな。



 それにしても、んぴょーしか言えないって、面倒だなぁ。


 なんでこんな縛りプレイをさせられているのだろうか?



「では、武器化してみてくれないか?」


「んぴょー」


 ナワデシバラさんが首を縦に振った。


 その直後、ナワデシバラさんが直立不動の姿勢になった。


「んぴょー」


「武器化が完了したのか?」


「んぴょー」


 ナワデシバラさんが動かずに声を上げた。


 これは使用したということみたいだな。


 それにしても、全然武器って感じがしないなぁ。

 動かないだけで、どう見ても、人間そのものだ。


 これはちょっと使うのをためらってしまうな……


 いや、それは覚悟を決めたナワデシバラさんに失礼だな。


 俺も覚悟を決めないと。



「では、持ってみるぞ」


「んぴょー」


 とはいえ、どこを持てば良いんだ?


 足首で良いのかな?


 まあ、とりあえず、持ってみるか。



 俺は両手でナワデシバラさんの両足首をつかみ、持ち上げてみた。


 うわっ、軽っ!?

 人間とは思えない軽さだ!?


 これが特殊能力か!?

 すごいな!


 ただ、武器としては、かなり重いな。


 でも、まあ、これならなんとか戦えるかな?


「全裸の変態男が縛られた女を持ち上げているぞ」

「実に変態的な光景だな」

「まったくデ~ス」

「これはひどいわネ~」

「ひどすぎマァス」


「うるさいぞ、お前ら!!」


「んぴょーんぴょーんぴょーんぴょーんぴょーっ!!!!!」


 ナワデシバラさんも同じような文句を言っているのかな?



「あれ? なんでナワデシバラさんを持つことができたんだ? ナワデシバラさんは、ドロップアイテムではないのに」


「おそらく道具の入手ではなく、仲間との協力であると判断されたのではないか?」


「ああ、なるほど、そういうことか」


「もしかして、シバルはレルを入手したかったのデ~スか?」

「さすが変態さんネ~」


「変なこと言うなっ!!」


「んぴょーんぴょーんぴょーっ!!!」


 ナワデシバラさんも怒っているようだ。



「ナワデシバラさん、ちょっと素振りをしてみるぞ」


「んぴょー」


 良いみたいだな。


 では、やるか。


 ナワデシバラさんを上下左右に振り回してみた。



「うん、なかなか良い感じだな。これなら戦えるだろう」


「んぴょー」


「ナワデシバラさんは大丈夫か? 気分が悪くなったりしてないか?」


「んぴょー」


「大丈夫と判断して良いのかな?」


「んぴょー」


 良いみたいだな。

 多分。



 それにしても、ナワデシバラさんって、本当に覚悟が決まってるって感じだな。


 きっと俺みたいに、何度もモンスターにやられたのだろうな。


 そうじゃなければ、見知らぬ男の武器になって、モンスターと戦おうとは思わないだろうからな。



「では、そろそろモンスターを探しに行こうか」


「んぴょー」

「うむ」

「了解デ~ス」


「よし、出発だ!」



「あっ、そうだ。ナワデシバラさんたちは、ゲームのクリア条件を知っているのか?」


「知らないデ~ス」


「そうか。そっちもか……」



 紫の球体を発見した。


「よし、あいつを倒そう」


「シバル、また声をかけてこようか?」


「ああ、頼むよ」


「了解よ」

「では、行って来る」



「んぴょーんぴょーんぴょー?」

「『いまのはどういうこと?』と言っているみたいデ~ス」


「幽霊たちに声をかけてもらって、モンスターの気を引こうというわけだ」


「んぴょーんぴょー」

「『良い作戦ね』と褒めているみたいヨ~」


「それはどうも」



 『あ』たちがモンスターを挑発し始めた。


 紫の球体は気を取られているようだ。


「よし、いくぞ、ナワデシバラさん」


「んぴょー」


 俺は紫の球体に接近した。


 くらえ、ナワデシバラ斬っ!!!!!


 ナワデシバラさんを思いっ切り振り下ろした。


 ナワデシバラさんの頭部が紫の球体に命中した。


 紫の球体ははじけ飛んだ。


 その後、飛び散った欠片は消えていった。



「これは勝ったということで良いのだろうか?」


「んぴょー?」


「とりあえず、ステータスウィンドウを見てみたら?」


「そうだな」


 ステータスオープン。


「おおっ! 経験値が1増えているぞ!!」


「んぴょーっ! んぴょーっ!」

「こっちも1増えてマ~ス!」


「ということは、俺たち、ようやく勝ってたんだな!!」


「はい、その通りデ~ス!」


「やったっ! やったぞぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉっ!!!!!!!!!!」

「んぴょぉぉぉぉぉっ!!!!! んぴょぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉっ!!!!!!!!!!」


「初勝利おめでとう!!」

「よくやったぞ、ふたりとも!!」

「おめでとうございマァス!!」


 他のみんなも祝福してくれた。


「ありがとう、みんな! よし、この調子でがんばろう!!」


「んぴょーっ!!」



「うるさいニンゲンウサウサ! 死ねウサウサ!!」


「えっ!?」


 いきなりコカラスグが現れ、体当たりをしてきた。


「うぽぁーーーーーっ!!!!!」


 俺は体当たりを、もろにくらってしまった。




 いつもの場所で目が覚めた。

 もちろん、全裸だ。


「くそっ、油断した! なんであんなタイミングで襲ってくるんだよ!?」


 せっかく勝利の喜びに浸っていたというのに、台無しじゃないか!!


 あのコカラスグは、空気を読めないヤツだな!!

 間違いない!!


「それはシバルたちが、大声を出したからではないか?」

「うむ、そうだな」


「うっ、それもそうか…… 次から気を付けよう」


「うむ、そうするべきだ」

「『勝ってかぶとの緒を締めよ』だな」


「ああ、肝に銘じておこう」



「そういえば、ドロップアイテムは出たのだろうか?」


「何もなかったぞ」


「そうか」


 次は何か落として欲しいものだな。

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