第7話 縄美女がやって来た

 白い布の猿轡さるぐつわをかんでいる。

 体と両腕が縄でグルグル巻きになっている。

 他には何も身に着けていない。

 黒髪ストレートロング。

 身長160センチくらい。

 スタイル抜群。


 このような姿の美女が近付いて来た。


「な、なんだあいつは!? 変態なのか!?」


「それはお互い様だな」

「お前は全裸だろうに」

「前を隠しておきなさいよ」


「やかましいぞ!!」


 息子さんを手で隠した。



 縄美女が俺たちの前まで来た。


「んぴょーっ! んぴょーんぴょーっ!!」


 縄美女が泣きそうな顔で、何かを言い始めた。


「『猿轡さるぐつわと縄を外してくれ』と言っているのかな?」


「んぴょーんぴょーっ!!」


 縄美女が首を横に振った。


「えっ!? 違うのか!? 外す気はないってことなのか!? やはり変態だったか!!」


「んぴょーんぴょーっ、んぴょーんぴょーっ!!!」


 縄美女が激しく首を横に振った。


「外す気はあるし、変態ではないってことか?」


「んぴょー、んぴょー」


 縄美女が首を縦に振った。


「どういうことなんだ? 何が言いたいんだ?」


「んぴょー!」


 突然、縄美女の前に、ステータスウィンドウと思われる青い半透明のプレートが現れた。


「んぴょーんぴょー」


「『これを見ろ』と言っているのか?」


「んぴょー、んぴょー」


 縄美女が首を縦に振った。


「分かったよ」


 プレートを見てみた。

 やはりこれはステータスウィンドウのようだな。



 名前:南和出紫原なわでしばら 麗流れる

 縄で縛られるのが好みって感じがするぜぇ!


 レベル:1

 がんばれよ、ルーキー!


 経験値:0

 未経験か…… この世界では生きにくそうだな……

 ちなみに、あと10ためるとレベルアップするでごじゃんすよ。


 HP:5/5

 こいつはすぐに死にそうだな。


 MP:0/0

 ぬおおおおおおおおおおおおおおおおおっ!! 神に祈れっ!


 攻撃力:1

 弱い! 弱い! 弱すぎぃぃぃぃぃっるぅっ!!!!!


 防御力:5

 その縄はかなり丈夫なんですよぉ。変態的ですがねぇ。


 魔法攻撃力:0

 ん~、これは…… ご縁がなかったということですかね。


 魔法防御力:0

 当たらなければどうということはない! 逃げ回るんだ!!


 素早さ:2

 う~ん…… う~ん…… イマイチ!


 器用さ:1

 手が使えないなら、こんなもんだねぇ。


 変態力:9999999999999999999999999999999999999999999999999999999

 す、すさまじい変態だな! 町に行ったら確実に逮捕されるぞ!!


 筋肉:1

 ああ、筋肉の神の嘆きが聞こえる…… もっと鍛えましょう。


 空腹度:98/100

 腹は減ってないぜ。


 口渇度:96/100

 喉は渇いてないぜ。


 清潔度:94/100

 汚れてないぜ。


 健康度:100/100

 う・こ・ん・け。


 ドスケベ力:99999999999999999

 う~む、これは結構高い方だな。


 女性力:99999

 こ、これは相当高いな!!


 アイドル力:20

 特殊なものにならなれそうね。


 年収:0

 とりあえず、就職活動をしましょうね。


 所持金:0

 即日払いのアルバイトをしましょう。


 肩書き:金なし変態縄猿轡さるぐつわんぴょー女

 それでも君なら生きていける。がんばれ。


 加齢臭:まだまだしない

 まだ対策しなくてもいいんじゃないかな?


 占い:今日の運勢は『異性に使われると良いことがある』です!!

 うそくせぇ。


 今日のオススメ:周辺探索

 何か良いことがあるかもしれませんねぇ。


 今日の天気:微妙なくもり

 そんなの空を見れば分かるだろ。


 明日の天気:知らん

 明日になれば分かることだな。


 明後日の天気:知らん

 明後日になれば分かることだろ。


 昨日の天気:忘れた

 細かいことは気にすんなって。前を向いて生きていこうぜ。



 特殊能力

 武器化

 自身の体を武器に変える能力。

 『武器化使用』と口にするか、心の中で思うと使用できる。

 『武器化解除』と口にするか、心の中で思うか、HPが0になると解除される。


 能力使用時

 体が直立姿勢で硬直する。

 意識はあり、目も見える、呼吸もできる。

 口が動かなくなるため、しゃべれなくなる。

 うなり声くらいなら出せるかもしれない。

 痛みを感じる。

 防御力と魔法防御力が大幅に向上する。

 身に着けているものや髪の毛などの体毛も固まり、壊れなくなる。

 攻撃されたり、何かにぶつかったりするとHPが減ることがある。

 体重が軽くなり、持ちやすくなる。

 武器を使用しモンスターを倒した場合、経験値を入手できる。

 硬直することによる健康被害は発生しない。



 縛りプレイ用のんぴょー猿轡さるぐつわ

 猿轡さるぐつわを強制的にかませられる。

 『んぴょー』としかしゃべれなくなる。

 呼吸、飲食、入浴に支障はない。

 猿轡さるぐつわをかませられることによる健康被害は発生しない。

 身に付けた時に自動発動する。

 ゲームをクリアするまで解除できない。



 縛りプレイ用の縄(両腕と胴体用)

 縄で強制的に縛られる。

 両腕と胴体をまとめて縛り上げられるため、両腕を使用できなくなる。

 入浴に支障はない。

 縛られることによる健康被害は発生しない。

 身に付けた時に自動発動する。

 ゲームをクリアするまで解除できない。



「な、なんだこの特殊能力は!? もしかして、ナワデシバラさんもゲームキャラの怒りを買ってしまって、縛りプレイをさせられているのか!?」


「んぴょー!」


 ナワデシバラさんが首を縦に振った。


「俺以外にもいたのかよ!?」



「ナワデシバラさんは誰かと手を組みたくて、ここに来たのか?」


「んぴょー」


 ナワデシバラさんが首を縦に振った。


「武器化の能力を使用して、経験値を稼ぐためか?」


「んぴょー」


 ナワデシバラさんが首を縦に振った。


「当然、武器になる覚悟はあるんだよな?」


「んぴょー」


 ナワデシバラさんが首を縦に振った。


「そうなのか。では、俺たちと組んでくれるか?」


「んぴょー」


 ナワデシバラさんが首を縦に振った。


「ありがとう、よろしくな!」



「では、俺たちも自己紹介をしないとな」


 俺と『あ』たちは自己紹介をした。



「ナワデシバラさんにも幽霊がいるのか?」


「んぴょー」


 ナワデシバラさんが首を縦に振った。


「ここにいマ~ス!」

「私もいるわヨ~」

「僕もいマァスよ!」


「やはりいるのか。よろしくな」


「よろしくお願いしマ~ス!」

「よろしくネ~」

「よろしくお願いしマァス!」



「ナワデシバラさんは、どんな縛りプレイをしているんだ?」


「特殊能力『武器化』『縛りプレイ用のんぴょー猿轡さるぐつわ』『縛りプレイ用の縄』の強制付与、お金入手禁止、初期所持品なし、倒したモンスターが落としたものドロップアイテムのみ入手可能という条件で、ゲームをクリアするというものデ~ス」


 俺より厳しいじゃねぇか!?


 ナワデシバラさんには優しくしてあげよう。

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