第4話 モンスターを倒そう

 いままでの情報を整理してみるか。


 家に帰るためには、ゲームをクリアする必要がある。

 そのためには、何をもってクリアなのか調べる必要がある。

 当然、どこかで情報収集を行う必要があるわけだな。


 ここはロールプレイングゲームのような世界なのだから、情報が欲しいなら町で聞き込みをすれば良いと思う。

 それがロールプレイングゲームの基本だからな。


 町に入るためには、変態力を下げる必要がある。

 ステータスにも明記されていたしな。

 あっ、それと町自体も探さないとな。


 変態力を下げるには、服を着る必要があると思う。

 多分。


 ……下がってくれるよね?

 他に変態であると判断される部分はないよな?

 ないはずだ。

 多分。


 というわけで、いまやるべきことは服を落とすモンスターを倒しに行くことになるわけだな。

 そのついでに、町も探してみようか。


 とはいえ、どのモンスターが落とすのかは分からないから、手当たり次第に倒すしかないんだけどな。



 では、次はどうやってモンスターを倒すか考えよう。


 俺のステータスは、かなり低かったな。

 それに、俺は格闘技をやっていたわけでもないし、運動神経が良いわけでもないし、武器も服も金もない。


 うぐぐぐぐぐぐ……


 こんな状態で勝てるのだろうか?


 これはちょっと無理なんじゃないかなぁ……


「シバル、さっきから何をしているんだ?」

「考えごとか?」

「屋外だというのに、全裸で考えごとか。変態的だな」


「うるさいっての! どうやってモンスターを倒すか考えていたんだよ!!」


「そんなもの悩む必要はないぞ」


「えっ? どうしてだ?」


「死んでも生き返れるからだ」

「とりあえず、突撃しろ」

「我々にそうさせたようにな」


「そ、それはちょっと遠慮したいところだな……」


「俺たちには強制したくせに、自分がやるとなると躊躇ちゅうちょするのか?」

「情けないわね! さっさとやりなさいよ!!」


「何言ってんだよ!? ゲームと現実は違うだろ!?」


「むっ、どうやら悩む必要はなくなったようだぞ」

「モンスターのお出ましだ」

「さあ、戦え。そして、死ね」


「えっ!?」


 あたりを見回してみると、紫の球体が近付いて来ていた。


 これはマズイ!

 まだ作戦が決まってないぞ!!


 ここはひとまず戦略的撤退だな!!


 よし、後ろに向かって、全速前進だ!!



 突然、背中に衝撃が加わった。


 どうやら逃げられなかったようだ……




 目を覚ますと、草原の真っただ中で、大の字になっていた。

 もちろん、全裸だ。


「無様な死にっぷりだったな」

「ざまぁ」


「やかましいぞ!! ……ん? あれは?」


 うげっ!?

 またあの紫の球体じゃないか!?


 しかも、こっちに向かって来ているぞ!?


 どうすれば良いんだ!?


 また逃げるか!?


 いや、逃げ切れるのか!?

 さっきとさほど変わらない距離だぞ!!

 また追い付かれて殺されるんじゃないか!?


 なら、戦うか!?

 だが、どうやって倒せば良いんだ!?



「変なニンゲンがいるウサ。ぶっ殺すウサ」


 紫の球体が話しかけてきた。


 どうやら迷っているうちに、接近されてしまったようだ。


「またそれかよ!? なんで殺そうとするんだよ!?」


「そうしなきゃいけない気がするからウサ」


「ええ…… そんな理由なら、殺さなくても良いんじゃないか?」


「うーん、多分ダメウサ。ぶっ殺すウサ。くらえウサ!!」


 紫の球体が跳びかかって来た。




 目を覚ますと、また草原の真っただ中で、大の字になっていた。

 当然のごとく全裸である。


「今回も良い死にっぷりだったわよ」

「うむ、見事であったぞ」

「ざまぁ」


「うるせぇよっ!!」


「むっ?」

「あれは?」


「どうしたんだ?」


「何かいるわね」

「こちらに向かって来るぞ」


「ええっ!?」


 周囲を見回してみると、バスケットボールくらいの大きさの銅で作られているように見える球体が近付いて来ていた。


 なんだあれは!?

 まさかあれもモンスターなのか!?



「変なニンゲン見つけたウサウサ」


 銅っぽい球体の方から声が聞こえてきた。


 ウサウサ!?

 なんで全然ウサギっぽくないのに、そんな語尾を付けるんだ!?

 訳が分からなさすぎるぞ!!


 って、そこはどうでもいいか。


 こいつもしゃべれるみたいだし、ちょっと質問してみようかな。


「君はモンスターなのか?」


「ニンゲンから、そう呼ばれたこともあるウサウサ」


 やはりモンスターなのか。


 ん?


「こともある? ということは、他の呼び名もあるのか?」


「『コカラスグ』と呼ばれたこともあるウサウサ」


「そうなのか」


 それが、こいつの種族名なのかな?



「君は俺以外の人間に会ったことがあるのか?」


「あるウサウサ」


「もしかして、このあたりに人間が住んでいるところがあるのか?」


「ちょっと離れたところにあるウサウサ」


 町があるのか。

 服を入手したら探してみるか。



「それじゃあ、ぶっ殺すウサウサ!」


「お前もなのかよ!? なんで殺そうとするんだよ!?」


「えっ? う~ん、なんとなくウサウサ?」


「やっぱりそんな理由なのかよ!?」


「細かいことは気にするなウサウサ! 死ねウサウサ!!」


 コカラスグが跳びかかって来た。




 目を覚ますと、またまた草原の真っただ中で、大の字になっていた。

 無論、全裸だ。


「今回のも良かったわよ」

「ああ、スッキリしたぞ」

「ざまぁ」


「いちいち感想を言わなくていいっての!!」


 くっ、早くなんとかしなければ!!

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