第2話 ルール確認

 金なし、服なし、ドロップアイテムしか入手できない縛りプレイを実体験だと!?


 そんなのやってられるか!?


 ゲームじゃねぇんだぞ!?



 ここは潔く誠心誠意謝ろう。

 どうやら俺が悪いみたいだしな。

 納得いかない部分はあるけど。


「私の認識不足でした。大変申し訳ございませんでした。多大なるご迷惑をおかけしましたことを、深くお詫び申し上げます」


 俺はそう言って、土下座した。


「死者が多発するような縛りプレイは、もう二度としません。どうかお許しください。お願いします」


「断る」

「その程度で許してもらえると思うな」

「世の中を甘く見すぎだ」


「そこをなんとか。この通りですから」


 俺は何度も頭を下げた。


「断る」

「許さん」

「大人しく罰を受けろ」


 これはどれだけ謝っても許してもらえなさそうだ。



「なんでこいつらは、こんな大それたことができるんだ? こんなの絶対おかしいだろ」


 怒りや憎しみが蓄積しただけで、こんなことができるようになるのなら、地球はもっととんでもない状況になっているだろうに。


「我々を見ていた神が、力を貸してくれたのだ」


「えっ!? 神!? そんなのいるのか!?」


「いるからこうなっているのよ」

「神は俺たちを幽霊みたいな存在にしてくれて、シバルをこの世界に転送させてくれたんだ」

「さらに、縛りプレイに必要なものを、すべて用意してくれたのだぞ」


「そ、そうなのか…… ん? ということは、お前たちは何もしてないのではないか?」


「な、何を言っているんだ!?」

「わ、我々は、あれだ、そう、神を動かしたのだ!!」

「そ、そうだ! その通りだ!!」

「ええ、そうね! そうなるわね!!」


「ええ……」


 それ、何もしてないようなものだろ。


 まあ、そこはどうでもいいか。


 問題は、なぜその神が、いろいろと便宜を図ってくれたのかというところだな。


 何か目的があるのか?


 なんかすごく怪しいな……


 大丈夫なのかな?


 とはいえ、ここで考えても分からないか。


 この件は保留にしておこう。



「結局、縛りプレイをやるしかないのか」


 ん?

 プレイ?


 プレイといって良いのだろうか?


 まあ、そこはいいか。


 言葉のあやというヤツなのだろう。

 多分。


「うむ、その通りだ」


 仕方ない、覚悟を決めるとするか。



 では、まずやるべきことは、ルールの確認だな。

 情報は大事だからな。


「ルールに関して質問があるのだが、聞いても良いか?」


「構わないわよ」

「『ルールはキチンと説明しろ』と、神に言われたからな」


「そうなのか」


 そこはキチンとしているんだな。



「ここは地球じゃないんだよな?」


「うむ、そうだ」


「なら、ここはどんな世界なんだ?」


「ロールプレイングゲームのような世界としか聞いていないぞ」

「地理とか常識とか、そういうのはまったく知らないわよ」

「というわけで、質問するだけ時間の無駄になるぞ」

「知りたいなら、自分で調べろ」


「ええっ!?」


 ということは、初見プレイで縛りプレイをするってことになるのかよ!?

 厳しすぎだろ!?



「ゲームのクリアとはなんだ? 何をすれば良いんだよ?」


 ロールプレイングだから魔王の撃破とかになるのかな?


「そういえば、なんだ?」

「我は知らんぞ」

「我もだ」


「なんだそりゃぁっ!? なんで知らないんだよっ!?」


「それは…… 神が言わなかったからになるわね」


「ええっ!? 目的が分からないのはマズいだろっ! あっ、そうだ! いま神に質問できないのかよ!?」


「ふむ、やってみるか」

「うむ、そうだな」



「祈ってみたが、返答はないな」

「これは自分で調べろということだな」


「そうか……」


 なんで言わなかったんだ?

 何かあるのだろうか?



「ドロップアイテムのみ入手可能なんだよな?」


「うむ、そうだ」


「食べ物や水もなのか?」


「そこは例外として扱うらしい」

「入手後、すぐに食べてしまうのなら問題ないそうだ」

「移動しなければ調理することもできるそうよ。捕まえた魚を、その場で焼いて食べるとかね」


「ドロップアイテム以外は、持ち運びできないということか」


「そうなるわね」


「それ、ちょっと厳しすぎないか?」


「これは縛りプレイであり、罰なのだ」

「よって、厳しいのは当然である」

「甘ったれたことを抜かすな」


「わ、分かったよ……」


 頭が痛すぎる……



「ドロップアイテムを加工したものは使用できるのか?」


「できるわよ」

「ドロップアイテムと、それ以外のものを組み合わせて作ったものは使用できないぞ」


「そうなのか」


 キッチリしているなぁ。



「縛りプレイ中に死んだ時は、どこかで生き返るからな」

「その際、ケガが治るうえに、栄養状態も改善されるらしい」

「さらに、全身が清潔になるそうよ」


「そ、そんなことが起こるのか!?」


「何を言っている?」

「すでに2度起こっただろ」


「ああ、やはりあれはそういうことだったのか…… そんなことができるなんて、さすが神だな…… すごいもんだ……」


「うむ、まったくだな」

「さすがよね」


 ゲームなら便利なシステムだが、実際には使いたくないものだなぁ……



「死亡時の精神的苦痛も、ある程度緩和されるらしいぞ」


「えっ? これは罰なんだろ? なんでそんなことをするんだ?」


「お前を何度も殺すためだ」

「そう簡単に壊れないようにしたということだ」

「我々と同じ目に遭え」


「そ、そういうことなのかよ……」


 恐ろしすぎる……



「そういえば、俺って行方不明になっているのだろうか?」


「そうだろうな」

「地球から消えたわけだしね」


「そのあたりの対策は立ててあるのか?」


「立ててないぞ」

「ないわね」

「神は何も言っていなかったな」


「おいっ! なんだよ、それは!? 俺だけじゃなく、周りのみんなにも迷惑がかかるじゃないか! そんなのおかしいだろ!!」


「そんなの知らん」


「そ、そんなぁ…… なんとかならないのかよ?」


「ならん」


 くそっ、早くクリアしないとマズいじゃないか!

 これはリアルタイムアタックでもあるのかよ!!

 すぐに動かないと!!


 いや、落ち着け、俺。

 焦っても失敗するだけだ。

 人生で何度もやってきただろ。


 ここは大胆かつ慎重にいこう。



「ロールプレイングということは、ステータス画面があったりするのか?」


「うむ、あるぞ」


 やはりあるのか。

 さすがはロールプレイングゲームだな。


「『ステータスオープン』と心の中で思うと、ウィンドウが出て来るらしいぞ」

「消す時は『ステータスクローズ』だ」

「口にしても良いらしいわよ」


「そうか。なら、さっそく見てみるとしようか」


 俺のステータスか……


 どうなっているのだろうか?


 ものすごいチート能力があると、うれしいのだがなぁ。

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