第14話

 ということで急遽、明日花の家に泊まることになった。


 一応自宅に今日は帰らないことを連絡すると母親から「いよいよ明日花ちゃんとお付き合いすることになったのね」と勘違い極まりない言葉とともに了承をもらった。


 とりあえず風呂で汗を流すよう友理奈さんから強く勧められたので、お風呂を頂いてから明日花の父親のパジャマに着替えた。


 うちの風呂よりも一回り大きい三宅家のお風呂でぽかぽかになって風呂から上がると、リビングでは友理奈さんがソファに寝そべりながら煎餅を食っていた。


「あ、上がったのね。明日花ちゃんが部屋で待ってるから行ってあげて」


 と、右手に煎餅を持つ友理奈さんの言葉に従って階段を上がると明日花の部屋へと向かう。


「入るぞ」


 一応ノックをしてそう尋ねると中から「はわわっ……」と情けない声が聞こえてきた。


「悪い。お取り込み中なら後にするけど」

「い、いや、大丈夫だ。入っても良いぞ……」


 ということらしいのでドアノブを捻って明日花の部屋に入った……のだが。


「なっ…………」


 明日花はお気に入りのカエルの顔をした座椅子に腰を下ろしていた。どうやらゲームをしていたようで、その手にはコントローラーが握られており、一見すればいつもと変わらない明日花の姿だった……のだが。


「な、なんちゅう格好してるんだよ……」

「はわ……はわ……」


 なんというか明日花の格好は凄いことになっていた。


 彼女は薄ピンク色でワンピース型のパジャマを身に纏っていた。


 いや、これだけでは上手く伝わらないか。


 もっと具体的に言うとそのワンピースは全面レース地で、胸の一部と下腹部は生地が濃くて隠れているが、体の大部分はスケスケで丸見えである。


 こういうのベビードールって言うんだっけ?


 とんでもなくエロい格好をしている明日花に絶句していると、彼女が顔を真っ赤にしたまま俺を見つめてきた。


「こ、これはその……そ、そうだ、この間と同じくお姉ちゃんの大学の課題だ」

「はあ?」

「言ったじゃないか。お姉ちゃんのお洋服のモデルになるって」

「え? あ、あぁ……そういやそんなこと言ってたな」


 明日花にモデルになってもらって俺の意見を聞きたいとかなんとか……。


 いや、にしても友理奈さんはなんちゅう物を高校生の妹に着させてるんだよ……。


 明日花がこんなどエロい服を普段着として使っているとは思っていなかったので、友理奈さんのことを聞いて一応は納得した。


 が、正直目のやり場に困る。


 さっきも言ったが明日花の体は一部を除いて大きく露出している。


 その健康的な太ももも、二の腕も、さらには豊満な胸の谷間も、いくら相手が幼馴染みとはいっても刺激が強すぎる。


 いくら幼馴染みとはいえ異性は異性なのだ。


 と、そこで明日花は座椅子から立ち上がると俺のそばに歩み寄ってきた。


「な、なんだよ……」

「はわわっ……」


 いや、ここでポンコツ化するな。


「祐太郎……どうだ?」

「どうだってなにが?」

「お姉ちゃんから感想を聞くように言われている」

「え? あぁ……なるほど……」


 そういえば、俺の感想を参考にするって話だったよな……。


 が、このどエロいベビードール姿の明日花になんて感想を述べるべきなのか……言葉がてんで出てこない。


「か、可愛いか?」

「可愛いというよりも……え、エロい……」

「はわわっ……」


 まあそういう反応になるよな。


 今更説明する必要もないが、俺と明日花は幼馴染みだし、これまで異性として意識をしたことはない。


 が、それでも彼女は異性である。しかも、客観的に見てかなりの美人さんだし、スタイルもかなり抜群な方……だと思う。


 そんな彼女がこんな格好をすれば、いくら幼馴染みとはいえ明日花を異性として見ずにはいられないわけで。


「ゆ、祐太郎……」

「な、なんだ?」

「さ、さ、触ってみるか?」

「はあっ!?」


 おいおい明日花ちゃん、いきなりなんてこと言うの……。


「とてもさらさらしていて気持ちいいぞ」


 そう言って彼女はスカートをわずかに捲るとスカートの裾を俺の方に差し出した。


 あ、なるほど……生地の話か。


 とんだ勘違いをしそうになった俺はわずかに安堵して生地を触らせてもらう。


 うむ、確かにさらさらで肌触りは良い。なんて生地の良さを感じていた俺だったが、わずかに顔を上げると明日花の大きな谷間が視界に入る。


 いかんいかん幼馴染みだぞ……。


 なんて必死に自制をしつつも生地から手を離すと、明日花が座椅子に戻ったので、俺もまた腰を下ろした。


 それからはいつも通り二人でゲームをすることにした。


 この間明日花が買ってくれたレースゲームをする俺たち。最初のうちはやはり自分の格好のどエロさに頬を赤らめていた明日花だったが、次第に慣れてきたようだ。


「おいおい祐太郎。これで5連勝だぞ。少しぐらいは維持を見せてくれよ」


 なんて肘でつついてきながらちょっかいをかけてくる。


 が、俺の方はずっとどエロい姿の明日花が視界に入ってくるものだから正直気が気じゃない。


 それでもなんとかゲームに集中していると、ふと部屋のドアを誰かがノックした。


 まあノックをするのは友理奈さん以外にいないのだけれど。


 そしてドアが開くと、そこにはなにやら外出用のお洋服を身につけた友理奈さんが立っていた。


「あ、あれ? お姉ちゃんどこかに行くのか?」


 なんて首を傾げる明日花に友理奈さんは「ごめんね。急に飲み会に行かないかって誘われちゃって」と顔の前で手を合わせる。


 急すぎないか? と思わないでもなかったが、大学生となるとそういうこともよくあることなのかなと思い直す。


「あ、そうだ明日花ちゃん、ちょっと」


 と、そこで友理奈さんが明日花に手招きをする。明日花は自分の顔を指さして私? と首を傾げつつも立ち上がって友理奈さんの元へと歩いて行く。


「祐太郎くん、少しだけ明日花ちゃんを借りるね?」

「え? あ、はい……どうぞ」


 ということで明日花の手を引きながら友理奈さんがどこかへと行ってしまった……のだが。


「はわわっ!! そんなこと私にはできない……」

「ここが正念場なのっ!! 一気に行きましょう」

「はわわっ……」


 とまたわけのわからに会話がわずかに聞こえてきて困惑していると、再び明日花の部屋のドアが開いて「じゃあ私は行ってくるね~」と俺に手を振って友理奈さんはどこかに行ってしまった。


 べつにそれはいいのだが……。


「な、なんかあったのか?」


 部屋に戻ってきた明日花は頬を真っ赤にしたまま俯いている。


「な、なんでもない。少なくとも祐太郎にはなんの関係もないっ!!」


 ん? 怒ってるのか?


 なにやら情緒不安定な明日花の姿に困惑しつつも、再び座椅子に腰を下ろした明日花とともにゲームを再開していた……のだが。


「ゆ、祐太郎……」


 しばらくしたところで明日花が俺の名を呼ぶ。


「どうした?」

「も、も、もっと近う寄れ……」


 明日花がいきなりお殿様のようなことを言う。


「は、はあ?」


 そう言って明日花が床をぽんぽんと手で叩いて、そばに来るように指図してきた。


「いや、なんで……」

「今日一日少し疲れたから少し寄りかからせて欲しい」

「な、なるほど……」


 まあ明日花が俺を背もたれにしてくつろぐことは別に珍しいことではない。が、今日の明日花はこのどエロい格好をしているせいで、その何気ないお願いにも妙な緊張が走る。


 が、断る理由もないので彼女のそばに座ると、明日花は顔を真っ赤にしたまま俺に寄りかかってきた。


 あ、これ……なんか色々マズいわ……。


 いつもとは違う明日花の格好に俺はなんとも言えない気持ちをなりそうになるのを必死に抑えるのであった。

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