第5話 図書館に眠る謎

翌日、アレンとリナは、昨夜見つけた古代魔法の書物について再び調べるため、図書館へと戻ってきた。昨夜は突然の影に襲われて逃げ出したが、アレンはその本に学園の失踪事件や古代魔法に関する秘密が隠されているという強い予感を抱いていた。


「大丈夫、今度はしっかり準備してきたよ」


リナが自信ありげに囁き、手に魔力で輝く小さな護符を見せた。それは簡易的な防御魔法が施されたもので、二人を守るためのものである。


「ありがとう、リナ。今回はじっくり調べられるといいな」


二人は再び図書館の奥へと進み、昨夜見つけた古代の書物が封印されていた本棚にたどり着いた。しかし、前日とは異なり、本棚の周囲に配置されたルーン文字が微かに光を放ち、まるで二人を試すかのように静かに輝いている。


「このルーン、何かが変わってる…?」


アレンが不思議そうにルーンを見つめると、リナも頷きながら本棚の周囲を調べ始めた。リナは精神魔法を駆使して、ルーンの痕跡を探り、ある特定の形が浮かび上がっていることに気づいた。


「見て、このルーンが繋がってる。まるで何かの暗号みたい」


リナの指摘に、アレンは無色の魔力を集中させ、ルーンの輝きが浮かび上がるように意識を向けた。すると、いくつかのルーンが線で結ばれ、古代文字で「最初の問い」と読める文字が浮かび上がった。


「これは…『最初の問い』? 何を意味してるんだろう」


アレンはその文字を指でなぞり、さらにルーンに集中した。すると、ルーンがさらなる光を放ち、図書館の奥に続く道が開かれた。そこには、無数の魔道書が並ぶ書架が広がっていたが、その中央に特別な台座があり、そこに次の問いが書かれた紙が置かれていた。


「『答えよ、光無き場所に残るものとは』…?」


アレンは一瞬戸惑いながらも、リナと共に謎解きを始めた。この問いが、何らかの方法で古代魔法や失踪事件と関連しているのではないかという予感がした。


「光無き場所って…闇とか、影を意味してるのかな?」


リナが考え込むように言う。アレンも思案しながら、自分の無色の魔力を見つめた。無色の魔力は他の色とは異なり、見えないものを映し出すような役割があると感じ始めていた。


「もしかして、答えは『記憶』とか、過去の痕跡じゃないかな?」


アレンの言葉に、リナは驚きながらも納得の表情を浮かべた。「確かに、過去の痕跡は物理的な光を持たないけど、存在そのものは残り続けるものだよね」


アレンが無色の魔力を台座に注ぎ、答えとして「記憶」と告げた瞬間、台座から青白い光が放たれ、封印がさらに解かれる音が響いた。そして、台座の奥から一冊の古びた本が現れた。


「これが、古代魔法に関する手がかり…?」


アレンは本を手に取り、その表紙を開いた。そこには、失われた古代魔法や封印に関する記述がびっしりと書き込まれていた。だが、それ以上に彼の目を引いたのは、失踪事件に関わるかのような記述だった。


「『禁断の扉を開けし者、彼方の闇に飲まれ、永久に記憶を失う』…?」


アレンは思わず声を漏らし、その言葉の意味を考え込んだ。この記述が示唆するのは、学園で失踪した生徒たちが「禁断の扉」に関わった可能性を示しているようだった。


「禁断の扉…失踪事件は、やっぱり古代魔法に関係しているのかもしれない」


リナは息を飲みながら、本の記述に見入った。「もしかしたら、禁断の扉がどこかに隠されていて、その扉を開けることで…」


その時、再び図書館の奥から不気味な気配が迫ってきた。昨夜と同じく、黒い影がうごめき始めたのだ。


「また来たのか…!」


アレンはとっさにリナを守ろうと立ち上がり、本を持ったまま後ずさった。だが、リナが冷静な表情でアレンを引き止めた。


「大丈夫、アレン。今回は準備してきたから」


リナは護符を掲げ、影に向かって防御魔法を発動させた。影は護符の光に反応し、一瞬ためらうように動きを止めた。


「今のうちに…次の場所を探そう!」


アレンとリナは本を抱え、再び図書館の出口へと急いだ。影が再び彼らを追いかけようとしたが、護符の防御魔法によって結界が張られ、図書館の結界が影を抑え込んでいるようだった。


図書館を出た二人は、息を整えながらその場に立ち尽くした。手にした本には、学園の失踪事件や古代魔法についての重要な手がかりが記されていた。


「この本に書かれていること、きっと他にも謎が隠されているはずだよ」


アレンが決意を込めて言うと、リナも頷いた。「うん。この学園には、まだ私たちの知らない秘密がたくさん隠されてる。そして、それを解き明かすことで、失踪事件の真相に近づけるかもしれない」


その夜、アレンとリナは手に入れた古代の書を解読するために再び図書館へ戻ることを決意した。学園に潜む闇と禁断の扉の謎が、彼らの前に立ちはだかっていることを実感しながら。

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