第4話 学園生活と図書館
セインフォード魔法学園でのアレンの新しい生活が始まって数週間が経った。彼はリナや他の仲間たちと共に、基礎訓練に励む毎日を過ごしていた。魔法学園では、魔力の基本的な使い方から応用までを習得するための厳しい訓練が行われる。
「アレン、もう少し集中して!魔力を感じることができれば、あとはそれを外に放出するだけだよ!」
リナが楽しそうにアレンを励ます。彼女は、アレンが無色の魔力をうまくコントロールできるようになるため、毎日彼に付き添って指導していた。
「分かってはいるんだけど…」
アレンは深呼吸をして、魔力の流れを感じ取ろうと集中した。しかし、彼が持つ無色の魔力は、他の生徒たちのように明確に見えるものではなかった。炎や水、光のような派手な魔法とは違い、アレンの魔力は透明で、ほとんど感覚でしか感じられないのだ。
「難しいな…無色の魔力って、どうやって外に出せばいいんだろう?」
アレンが悩む中、リナは励ますように笑顔を見せた。「大丈夫!最初は誰でもうまくいかないものだよ。私も精神魔法を初めて使ったとき、全然感情をコントロールできなかったんだから!」
リナの明るい言葉に、アレンは少し元気を取り戻した。彼女の支えが、今の彼にとってどれだけ大きな力になっているかを感じていた。
その日の訓練が終わり、アレンとリナは学園内の食堂で一緒に食事をしていた。食堂には生徒たちが集まり、賑やかな雰囲気が広がっていた。魔法学園特有の料理が並び、光り輝くフルーツや魔力を込めたスープなど、異世界ならではのメニューが豊富に揃っている。
「このスープ、美味しい!アレンも試してみて!」
リナが差し出すスープを一口飲んだアレンは、その不思議な味に驚いた。「これ、なんかすごく元気が出る味だね。魔力が込められてるのかな?」
「そう!『エネルギースープ』っていって、魔力を活性化させる効果があるんだよ。学園の訓練で疲れた体を回復させるのにぴったりなんだ」
リナが楽しそうに説明する中、アレンはふと周囲の生徒たちの会話に耳を傾けた。
「また失踪事件があったって聞いたけど、今度は誰が…?」
「シリウス班の生徒らしいよ。昨日の夜、突然姿を消したって」
その言葉に、アレンは食事を止めてリナの顔を見た。リナも真剣な表情に変わり、声を潜めた。
「最近、学園内で失踪事件が増えているんだ…何人もの生徒が、ある日突然いなくなって、それっきり戻ってこない」
「どうして誰も止められないんだろう?教師たちは何をしてるの?」
アレンの問いに、リナは肩をすくめた。「私も分からない。でも、教師たちは何か隠してる気がするの。学園長も、あまり詳しいことは教えてくれないし…」
二人は不安げに顔を見合わせた。失踪事件の原因が分からない以上、自分たちにも同じことが起きる可能性がある。
リナの言葉に、アレンは眉をひそめた。「共通や何か手がかりがあればいいんだけど」
「実はね、私少し調べてみたんだ」リナは真剣な表情で続けた。「失踪した生徒たちは、みんな『古代魔法』に関心を持っていたって噂があるの」
「古代魔法?」
「そう。私たちが学ぶ通常の魔法とは異なり、古代魔法は遥か昔に失われた技術で、強力だけど危険なものも多いって聞いてる。でも、その正体はまだはっきり分かっていないんだ」
アレンはその言葉に興味を引かれた。「もし古代魔法に関わる何かが、この学園にあるとしたら…それが失踪事件の原因かもしれないってこと?」
「そうかも。でも、私たちだけで深入りするのは危険だよ。学園長も、古代魔法の扱いには気をつけるようにって警告してるし」
「分かった。でも…」
アレンは考え込んだ。何かが自分の中で引っかかる感覚があった。この世界で目立たない存在だった自分が、無色の魔力を持ち、異世界に転生したのは、ただの偶然ではないのではないかという思いが頭をよぎった。
「でも、僕たちだけでできることがあるなら、やってみたい。何か手がかりがあるかもしれない」
リナは少し驚いたような表情を見せたが、すぐに微笑んだ。「アレン、やっぱり君は好奇心旺盛だね。でも、その気持ちは大事だと思う。私も協力するよ!」
その夜、二人は学園内の図書館で、失われた古代魔法に関する書物を探し始めた。図書館は広大で、古い本が山のように積まれている。生徒たちが自由に使える一方で、一部の本棚は封印され、アクセスが制限されていた。
「この本には、古代魔法の基礎について書かれているみたい」
リナが取り出した古い魔道書を二人で覗き込む。そこには、魔法陣の図や、魔力の流れを記した図解がびっしりと書き込まれていた。
「すごい…これ、学んだことがないような魔法ばかりだ」
アレンは目を輝かせた。彼は無色の魔力をどうにか役立てたいと思っていたが、もしかしたら古代魔法と関わることで、自分の力の本質に近づけるかもしれないという期待が芽生えた。
しかし、その時――図書館の奥から、ひんやりとした風が吹き込んできた。まるで何かが自分たちを監視しているかのような、不気味な感覚がアレンの背筋を凍らせた。
「リナ、今、何か感じなかった?」
「うん…何か…変だね」
二人は周囲を見回したが、誰もいない。しかし、奥の封印された本棚の一部が微かに光を放っているのが見えた。
「行ってみよう」
アレンはリナと共にそちらへ向かった。光る本棚には、厳重な封印が施されており、普通の生徒では決して開けられない仕組みになっていた。しかし、その光は彼らを引き寄せるように輝きを増していた。
「この奥に…何かがある」
アレンとリナは、封印された本棚の前で立ち止まった。その本棚はまるで生きているかのように、アレンの無色の魔力に反応して微かに光を放っている。リナは慎重な表情で周囲を確認し、誰もいないことを確かめると、アレンに小さく頷いた。
「アレン、これ…普通の生徒が触れちゃいけない場所だと思う。でも、君の無色の魔力が反応しているなら、何か意味があるのかも」
アレンは彼女の言葉に同意しながら、手を本棚に近づけた。すると、彼の手から放たれた無色の魔力が、本棚の封印に触れた瞬間、魔法陣が浮かび上がり、淡い青白い光が周囲に広がった。
「これ…!」
アレンが驚きながらも封印に触れ続けると、徐々に本棚が開き、隠されていた書物が姿を現した。それは、他の魔道書とは明らかに違う、古代文字で装飾された古びた大きな本だった。
「これは…古代魔法の書?」
リナが興味深そうにその本を手に取ろうとしたその瞬間、突然、図書館全体が振動し始めた。まるで何かが二人の行動に反応したかのように、周囲の光が揺れ、空気が不穏にざわつく。
「アレン、気をつけて!何かが近づいてくる!」
リナが警戒の声を上げた。アレンもすぐに周囲を見回すと、図書館の奥から黒い影がうごめくのが見えた。それはまるで闇そのものが具現化したかのように、ゆっくりと二人の方へと迫ってきていた。
「これって…魔法の仕業?」
アレンは無意識に身構えたが、リナは慌てながら、彼の手を取り叫んだ。「アレン、この場所はもう危険だ!一旦ここから離れよう!」
二人は急いで図書館の出口に向かって走り出した。しかし、黒い影は彼らの後を追いかけ、まるで生き物のように手を伸ばしてきた。アレンは後ろを振り返り、その影が徐々に近づいてくるのを見て、冷や汗が背中を伝った。
「早く、出口まで!」
図書館の外に出た二人は、肩で息をしながら振り返った。扉の向こうにはまだ黒い影がうごめいていたが、図書館の結界がそれを抑え込んでいるようだった。
「ふう…危なかったね。でも、あの本、何かすごく重要なものだったんじゃない?」
アレンが息を整えながら言うと、リナは頷きながら少し考え込んだ。「確かに…でも、あの影が出てきたってことは、あの本に触れるのを誰かが嫌がっている証拠かも」
「誰かが…?」
「そう、あの本は普通の魔道書じゃない。学園の誰か、もしくはもっと大きな存在が、古代魔法について隠しているのかもしれない」
アレンはその言葉に深く頷いた。自分がこの異世界に来て以来、彼には常に違和感がつきまとっていた。それが何か、少しずつ形になり始めているような気がした。
「リナ、僕たちであの本の秘密を解き明かそう。失踪事件も、それに関係しているかもしれない」
リナは一瞬、驚いたようにアレンを見つめたが、すぐに笑顔を浮かべて答えた。「うん、私も手伝うよ!君がいるなら、きっと何かが変わるはずだから」
その後、アレンとリナは図書館から離れ、学園の中庭で一息ついた。夜風が冷たく感じられ、空には二つの月が光っていた。アレンは夜空を見上げながら、自分の中で決意を新たにしていた。
「僕がこの世界に来たのには、きっと意味があるんだ。無色の魔力が、ただの魔法じゃないって感じる。学園の謎を解き明かして、みんなを守りたい」
リナはアレンの横で、彼の顔をじっと見つめた。「アレン、本当に頼もしいね。私も頑張るよ。だから、一緒に頑張ろう!」
二人はその夜、学園の謎に立ち向かうためにお互いの力を信じ合い、これからの試練に備える決意を固めた。
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