第2話 魔法学園

「アレン、早く行こうよ!」


目の前を元気よく跳ねながらリナ・エルフィードが、まだ戸惑いながらも歩くアレンを導くように魔法学園の門へと向かっていた。


「この学園、すごく広いよね!初めてここに来たとき、私もびっくりしたんだよ!」


アレンは、人懐っこい彼女の態度に少し戸惑いながらも、その明るさに救われるような気がした。自分がこの異世界に来たばかりで不安を抱えていることを忘れさせてくれる存在だった。


「そうなんだ…確かに、すごく広いね。これ、全部が学園なの?」


アレンは周囲を見回しながら尋ねた。目の前に広がる学園は、彼が今まで知っていたどの学校とも違っていた。城のような建物、巨大な塔、そして空中に浮かぶ魔法の紋章――全てが非現実的で、圧倒される光景だった。


リナはアレンの質問に元気よく頷きながら、嬉しそうに解説を始めた。


「そうだよ!ここ、セインフォード魔法学園は、世界中から選ばれた魔法使いが集まる場所なんだ。魔法の基礎から上級の呪文まで、ここで全部学べるの。君もこれからいろんなことを学んで、すっごく強い魔法使いになれるんだよ!」


「すごいな…」


アレンは彼女の言葉に感心しつつも、自分が本当にここでやっていけるのか不安を感じていた。自分も「魔力」を持っているのは分かるが、まだその力がどんなものなのかさえ分かっていない。だが、リナの明るさがその不安を和らげてくれた。


「さて、それじゃあまず、学園のシステムを教えてあげるね!」リナは胸を張って言った。


「学園では、主に五つの魔法系統があって、それぞれの系統に分かれて学ぶことになるんだ。赤色の攻撃魔法、青色の守護魔法、緑色の回復魔法、黄色の召喚魔法、そして紫色の精神魔法の五つで、系統ごとに魔力も色が違うの!私が得意なのは精神魔法で、人の心を読むとか、相手の感情を操ることができるの!」


リナはそう言って、得意げに笑った。アレンはその説明に驚きながらも、彼女がそんな力を持っていることに少し恐怖を感じた。


「人の心を読むのか…それって、すごいけどちょっと怖いね」


「ううん、怖がらないで!」リナは笑顔を浮かべながら手を振った。「私は悪いことに使わないよ!それに、強い魔法使いになろうと思ったら、まず心を鍛えないといけないんだ。精神魔法は、心が弱いと上手く使えないの!」


「なるほど、魔法にもそういう制約があるんだね」


「そうそう!だから、学園ではまず基礎を学んで、自分の得意な系統を見つけることが大事なんだよ。それで、アレンはどの系統が気になる?」


アレンは少し考え込んだ。色の見えない魔力を持つ自分がどの系統に属するのか、まったく予想がつかなかった。


「僕の魔力感じられるけど、色がないみたいなんだけど、なんだろう?」


リナは少し驚いたように目を見開いたが、すぐに笑顔を取り戻した。


「そっか。でも大丈夫!ここでは初心者でもすぐに成長できるように、最初は全員が基礎訓練を受けるからね!それに、無色の魔力ってすごく珍しいよ!稀に5色意外の色の魔力をもつ人が10000万人に一人くらいの確率でいるみたいね、特別な魔法を使えるって学園長も言ってたし!」


リナの言葉に少し安心したアレンは、彼女に促されるまま学園の中へと足を進めた。


学園の中に入ると、そこはさらに驚くべき光景が広がっていた。広大なホールには、宙に浮かぶ魔法の書物や、石畳に刻まれた魔法陣が輝いている。学生たちはそれぞれの魔法の訓練に集中しており、炎や水、風が自在に操られているのが見えた。


「ここは、基本魔法の訓練場だよ!」リナが説明を続けた。「みんな、自分の魔力を鍛えるために、こうやって練習しているの。最初は簡単な魔法から始めて、少しずつ難しい魔法に進んでいくんだよ!」


アレンはその光景に圧倒されながらも、どこか自分がその中に入れるのか不安に感じた。自分は魔法が使えないかもしれない――その疑念が頭を離れない。


「ねえ、アレン!」


リナが急にアレンの前に立ち、元気いっぱいに笑いかけた。


「まだお昼休みの時間あるし、教えてあげるよ!君が無色の魔力をどうやって使うか、二人で一緒に考えようよ!」


彼女の目は、輝いていた。その好奇心と優しさに満ちた表情に、アレンは少しだけ自信を取り戻した。


「ありがとう、リナ。でも、本当に僕にできるのかな…」


「もちろんできるよ!君はきっと特別な力を持ってるはずだから、自信を持って!」


彼女はその言葉を力強く言い放ち、アレンの手を引いて訓練場の一角に連れて行った。そこでは、学生たちが自分の魔力をコントロールするための基礎訓練を行っていた。


「まずは、魔力の流れを感じてみよう!」リナはアレンに魔法の基本を教え始めた。


「魔力は、自然の中に存在するエネルギーを自分の中で循環させることで、魔法として使えるようになるんだよ。私たち魔法使いは、その流れを感じて、自分の魔力を自由に操ることができるように訓練してるの」


アレンは彼女の説明に耳を傾けながら、自分の体の中で何かを感じ取ろうとした。目を閉じ、集中する。すると、体の中を流れる何かが感じられた。それは温かくもあり、冷たくもある不思議な感覚だった。


「感じる…これが、魔力?」


「そう!それが君の魔力だよ!」


リナの明るい声が響いた。その瞬間、アレンの胸に少しだけ希望が芽生えた。この異世界で、自分も何かを成し遂げられるかもしれない。


「次は、それをどうやって形にするかを練習しようね!」


リナとそんな約束をしながら廊下を歩いていると

後ろからアレンを呼ぶ声がした。

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