第6話

それから家の近くまで送ってくれた。


その時に名前と、プロボクサーだということを教えてくれた。


けどっ。


連絡先は交換しなくてっ。


私に勇気がなくて聞けなくてっ。


今までに何回もチャンスはあったのに、やっぱり聞けなくて。


でもまさか連絡先の交換よりも先に家に来ることになるなんて……。


お呼ばれされてないけど。


なんならヌイグルミに憑依なんてヤバい状態で、なんだけど。



「コンビニ行ってくるわ」



ヌイグルミの頭をポンポンと叩いて深澤さんが言う。


深澤さん……?


まるで私がこの中に居るのがわかっているかのよう……



「今日は……美希ちゃんが居ると良いな」



!!??


なんと!?


今、なんとー!?



爆弾発言を残して、深澤さんは出て行った。



……いや、きっと深い意味はない。


期待してはダメだ、うん。


落ち着け。



自分に言い聞かせつつ、ゆっくりと部屋を見る。



私の部屋と同じような間取りの1Kの部屋。



無駄なものが一切無くて、黒と白で統一されてる。


とても深澤さんに似合った部屋だ。


本棚にはギッシリとボクシングの本と料理の本が並んでいた。


……今のところ女の気配はない。



『ボクシングに夢中で』と彼女の居ない理由を話してくれたことがあるけど。


本当みたい。


ありがとう、ボクシング。



心の底からの感謝を述べていたら、深澤さんが帰って来た。


早いな。


ココはコンビニの近く、なのかな?


??


厳しい表情でズカズカとこっちまで来た深澤さんは突然、ヌイグルミを抱きしめた。



ひょええええーっ!?

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