episode6 太陽と月

悠介が、俺にキスをした。


寝たフリして、段々と悠介が

近ずいてくるようなっていうか

近ずいたんだけど!

待てよ、俺ファーストキスじゃんか!と

帰ってる途中で我に返った。


俺の事すきなの?!たまたま?!

気分で?!って思ったが

悠介はそんなやつじゃない。


学年でも結構モテるほうだし

告白なんて俺が知ってる限り

何回あったことか…


悠介は月だ。

暗い中で、ひとりでも

かならず優しく照らしてくれる。

道に迷わないように。


小学生のとき野球チームに

入っていた。

そのとき、肘を痛めた。

まだ若いからと医師から説明は

受けたが、みんなが段々と成長していって

その中でも俺の肘は良くならなかった。


悔しくて、劣等感でいっぱいだった。


そのとき、あの川沿いのベンチで

座って家にすぐ帰りたくなくて

なんとなく座っていた。


真っ暗だった。


後ろから声が聞こえた。

「凛太郎?」


「悠介…」


沈黙が続いた。

なにか話さないとって頭の中では

分かっているのに言葉がでなかった。


「ほら」


「焼き芋…」


半分こなと、悠介が渡してくれた。

自然と涙が出てきた。


「ゆうすけえぇえ!!!」


「うわっ!鼻水つけんな!」


悠介が照らしてくれたから。

あの日から俺は立ち直れたんだ。


自分の中で、悠介の存在が

とても大きくなっていたのに

そのときは気づかなかった。

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