episode5 2人
ピンポーン
「あら!凛太郎くんかしら!」
「母さん、いつも誰か来たら俺に言うのに
凛太郎のときだけ自分がでるのかよー」
しー!っとやりながら
玄関へ向かう母親。
いつもはスリッパなんか儚いのにと
思いながら。
「おじゃまします!これうちの母さんからです!」
「あら!これ駅前の高いチョコレート?!
わざわざいいのにぃ~」
「凛太郎ー、こっちこっちー」
何やってんだと思いながら
凛太郎を呼ぶ。
「優香ちゃん、久しぶり!」
優香が抱きつく。
凛太郎には優香も懐いてる。
凛太郎は子供のあやし方が上手い。
将来は保育士とか似合うなとか考えていた。
「悠介!今日野球やってんだぞ!
みねーのかよー!」
「そーよ!今日は野球よ!悠介!」
なんで、母さんまでと思いながら
チャンネルを変える。
「うあー!もう一点とられてるし!」
なんだか今日は騒がしそうな日に
なりそーだと思いながら野球を見る。
「凛太郎、お前野球部はいらなかったの?なんで?」
「見てるだけで充分!」
でも、小学生のとき野球チーム入ってたなあと
思い出した。
凛太郎は足が早くてチームの中でも
一番と言ってもいいくらいだ。
もちろん、中学に入ったときも
先生たちに念押しされていた。
なんで入らなかったんだ?と
疑問だらけだった。
「お昼ご飯できたよー!」
「うおー!おばさんの作る料理すげえっすね!」
こんな昼ごはん見たことないぞと
心の中でふつふつと思いながら。
「優香、ほら」
「悠介は相変わらず、妹ラブだよなー」
「っていうか、シスコンよ、凛太郎くん」
もぐもぐと母親が言う。
余計なことを凛太郎に言うな…いや
でも合ってるのか?と少し疑問を抱く。
久しぶりに自然と笑みがでる
ご飯だった。
凛太郎は場の雰囲気を
明るくさせるなにかをもっている。
だから、凛太郎の周りには人が集まる。
まるで太陽みたいにみんなを
明るく照らすように。
「そういえば、宿題もってきた!」
昼ごはんを食べて凛太郎が言う。
「あぁ、じゃあ部屋でやろうか」
母さんは、優香とショッピングモールへ
出かけた。また大量の優香の服でも
買うのだろう。
「で、ここがこーなって、こうしておわり!」
「なんでこーなって、こーでこうしておわり!
なんだよ!わけわかんねえ…」
「休憩だな」
凛太郎がベッドに寝転がる。
「おい、休憩って寝るんじゃねーぞ」
「しりましぇーん」
家には母親も優香もいない。
つまり2人きり。
この状況に改めて気付かされた。
2人きり…
「りん、たろー…」
そんなに考え事してたか?と
思ったけど、5分しかたってないはず!
この短時間でよく寝れるなこいつと
思いながら寝顔をみる。
この寝顔みてるのも
いまは俺だけ。
優越感で胸がいっぱいだった。
いまだけ凛太郎を独り占めできてる。
こんなに幸なことあるだろうか。
学校ではいつも誰かが凛太郎を
起こす。
でも、いまは俺だけ。
「爆睡だな、これ」
凛太郎と俺の唇が近ずく。
いまなら、と思い
そっと口付けた。
起きない。
安堵した。
ファーストキスが凛太郎。
俺が一方的にしたんだけど
気持ちより、体が勝手に動いてた。
「ふぁあー」
ビクッ!と身体が跳ねた。
何事もなかったようなふりをして
凛太郎に話しかけた。
「お、き、ろ!」
「やだよおおおー巨大からあげは俺のもんだあー」
意味のわからないことを言う。
夢でも見てたんだろうか。
兎に角、凛太郎を起こした。
丁度いいタイミングで
母さんと優香が帰ってきた。
宿題も終わったし、無理やり
凛太郎を起こした。
気づいてないよなと不安だったが
あの時の凛太郎は爆睡だった。
大丈夫、凛太郎は起きてなかった、絶対。
深呼吸して話しかけた。
「巨大からあげってなんだよ」
そんなたわいも無いことで笑って
話せてるだけで幸せだったのに
欲がでた。
今日を、あの時を、僕たちは忘れないだろう。
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