episode4 約束

宿題をすまして、優香の

掛け算を見ていた。


「悠介ー、凛太郎くんから電話」


珍しい、と思いながら

受話器をとる。


「もしもし?」


内容は今なにしてるから、

明日遊びに行くっていう話に変わった。


日曜日。

いつもは、優香が声を出せるように

発声練習をしてみたり

所謂、妹dayだった。


嬉しかった。

凛太郎は日曜日は妹と過ごすことを知っている。

でもいきなり遊びに行くなんて

きっと優香も喜ぶだろう。

もちろん自分が一番喜んでいる。


優香にとってもいいことに違いない。

宿題もみてやれる。


凛太郎の宿題を手伝うのは

自分だけの特権だ。と思っていた。

ほかの誰にもそれは譲ることはできない。


「宿題ももってこいよ」


そう言いながら電話を切る。


「凛太郎くん、明日くるってー???」


「うん、12時くらい」


母さんが愕然とした顔で俺を見る。

「ど、どうしたの」


「日曜日ってー!いつも適当なごはんじゃない?!

そんなとこ見せられないわ!」


スーパー行ってくる!と言って

母さんが急いで、出ていった。


「お、」


うしろから聞き覚えのない声が聞こえた。


優香だった。


「優香?!いま、喋った?!」


ほんと少し、単語でもなんでもない。

だが、優香のくちから、わずかでも

声が出たのだ。


優香が色鉛筆でかく。

渡されてそこに書いてあったのは

「おにいちゃん、たのしそう」

たどたどしく、なんでこんな事書いたのか

意味がわからなかったが

きっとこれを言いたかったことは

わかった。


「おにいちゃんって、言いたかったのか?」

と聞くと、コクンとうなずいた。


「優香!お前やっぱ天才だよ!」

と抱きしめる。


「絶対しゃべれるようになれるから、

お兄ちゃんがいつまでも付き合うからな」と

頭を撫でた。


優香の一言で感極まっていて

その時明日何が起きるのかなんて

気づいてもいなかった。


その時までは。


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