落ちこぼれダンジョン探索者の成り上がり 〜特質『ステータス』が覚醒した結果、数値を自由自在に操作できるようになったので頂点を目指します〜

さい

No.0 プロローグ

 ダンジョン探索者、それはダンジョンに潜り、珍獣や魔獣、金銀財宝、秘境を求めるロマンに溢れる職業。

 親父は世界に数百人しかいない最高ランクS級のダンジョン探索者だった。

 だから、俺こと黒宮ゴウもS級ダンジョン探索者になれると思っていた。

 けれど、現実はそんな甘いものではなかった。


 模擬人工構築式ダンジョンにて──


 目の前には一体の大ウサギ。

 

 はあはあ……、と息を荒くしながら俺はその場に倒れた。


 なさけねえ……。

 危険度Eのくせに……。


 身体が動かなかった俺の元に現れたのは一人の男だった。

 大ウサギが俺に向かって鋭い爪を突き刺そうと右腕を振りおろした。

 同時に、その男は刀携えていた剣を手に持ち大ウサギに向かって一振り。

 次の瞬間、大ウサギは真っ二つに割れた。


「大丈夫か、ゴウ」

「先生……」


 彼の名前は鳥崎ウズラ。

 俺の先生だ。

 

「あんま無茶すんな」


 と、俺を背負う。


 無茶するに決まっている。

 なんたって、俺は、


 ポロポロと大量の涙が溢れ出した。


「俺は弱え……」


 同学年で、一番弱い、落ちこぼれダンジョン探索者なのだから。



 ダンジョン探索者学校。

 一人前のダンジョン探索者になるための学校だ。

 卒業までは六年だが、卒業試験に合格しなければ、七年と八年と、下手すれば永遠に卒業することのできない。


 俺はそんな学校に通う十歳の三年生だ。

 

「ウズラ先生、俺は卒業できるんかなー」


 ウズラ先生に手当てをしてもらいながら、俺はそんなことを口にした。


「なあに、できるさ」

「大ウサギを討伐できなくてもかー?」

「まあ、そう焦るな。お前はまだ三年生……あと三年もあるんだ」


 周りのやつらはみんな大ウサギを討伐し初めている。

 俺も大ウサギを討伐できるようにならなくては、到底S級ダンジョン探索者になんかなれない。


「俺の特質、何に使えばいいんだよ全く……」


 特質。

 それは、ダンジョン探索者になるために必要な資格。

 十万人に一人が目覚める不思議な力。


 俺が目覚めた特質は【ステータス】という対象者の力を数値として見れる能力だった。

 ハズレもハズレだ。

 正直言って何に使う能力なのかさっぱりわからない。

 炎を操れたりする力に目覚めたかった。


「きっと覚醒させることで真の力に目覚める系なんだろーな」


 ボソリ、とウズラ先生がそうつぶやいた。


「覚醒、なんだってよ、それは?」

「特質は覚醒させることで100%の力を使えるんだ。覚醒する前じゃ、本来の力の20%しか発揮できていないんだ」

「じゃっ、じゃあ、覚醒させなきゃっ」

「無理無理、お前みたいなガキじゃまだ無理だ。できてもあと十年後だなー、もちろん、覚醒できずに人生を終える者だっている。ほとんどがそうだな」


 覚醒……。

 覚醒すれば、もしかして俺のこの特質も使えるようになるのか!!


「とにかく、今のお前は肉体を鍛えろ!! あんな大ウサギくらい俺みたいに一振りで倒せるようになれ!!」

「そっ、それは無理だって、さすがにできるはずない」

「そう諦めるな。お前はまだ若いんだし、将来のことなんて深く考えるなよ」


 深く考えるに決まっている。

 なんたって、俺は親父のようなS級ダンジョン探索者になるのだから。

 こんなところでつまずいている場合じゃないんだ。


 手当てを終えると、ウズラ先生は立ち上がり、微笑みながら俺の頭に手をポンと置いた。


「(そう、お前はまだ若い。伸びしろしかないんだ)」

「なっ、なんだよ!?」

「よしっ飯でも食いに行くか」

「カレーがいい!!」

「またかよ!? 今日で一ヶ月連続だぞ!? 今日、モモコ先生からカレー臭いって言われたのに……本当好きだな」

「あったりめーよ。カレーは本当にうめーんだよ!!」


 現在、俺はウズラ先生と暮らしている。

 母さんは物心着く頃には亡くなったし、親父は俺を置いてダンジョン探索者として生きている。


 特質を覚醒させるか。

 覚醒なんてものがあるだなんて知らなかった。

 ぜってえに覚醒させてやる!!

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