難病にかかって12年・・・発症から現在までを振り返ってみようと思った

ゆうき里見

第1話「初めはうつの症状だった」

 今から遡ること、12年前の2012年8月半ば。

 当時は勤めていた会社の夏季休暇の真っ最中で私にとって、とてもショッキングな出来事が起こり、それがきっかけだったのかうつ病のような症状に襲われ始めた。


 初めて症状が出たのは朝、ふとんの中で目が覚めた時だ。

 突然、ワケもわからず怖くなって息苦しくなり、体がカッと熱くなる。

 気分の落ち込みも感じるようになり、日常生活においても次第にしんどくなってきた。

 夜は完全に眠れなくなり、心身ともに辛くなってきたのでひとりで抱えきれなくなった私は同居してる母に症状の事を打ち明けたのだが

「アンタみたいな呑気な子がうつ病になるハズがないじゃないの」と返され、心療内科に行くまでにはならなかった。


 そんな中、夏季休暇が終わったので再び会社に出勤する日々を送るようになったのだが、相変わらず夜は眠れないままだった。


 そして、私はある事に気づく。

 うつの症状で眠れない以外に、あおむけの姿勢で眠ろうとすると苦しさを感じて眠れないという事に。

 右肩を下にして眠ると眠れないのは変わらないけど、多少苦しさはラクになる、ではどこが苦しいのかというと......お腹なのだ。

 確かにお腹も張ってるなという自覚はあった。

 それから、気になってる症状が......。

 数年前からお腹が圧迫されるようになったのだ。

 この症状、けっこうしんどくて横にならない限り圧迫感は消えない。

 次第に症状は勤務中にも出るようになってきていたので、ひょっとして関係があるのかもしれないと思った。

 


 その時、脳裏に浮かんだのは

「もしかしたら、お腹に水がたまってるのかも」と

「私もお父さんと同じ病気にかかってるのかも」だった。


 父は難病のひとつである多発性嚢胞腎にかかっていたが、20数年前に亡くなっている(ただし父の場合は通院をやめてしまった事が原因だった。これは私たちに責任がある。私たちが父の気持ちに寄り添っていれば、死期が早まる事はなかった。本当に父には可哀想な事をしたと思う)。


 多発性嚢胞腎は、腎臓にのう胞(液体の詰まった袋)がたくさん出来て、そののう胞が大きくなる難病。

 のう胞が増えて大きくなってくると腎臓は大きくなり腎機能は低下、最終的には腎臓が働かなくなる事もある、とされており、合併症のひとつに肝のう胞がある。

 しかもこの難病は親がかかっていた場合、半分の確率で子供に遺伝すると聞いていたので、ひょっとして私も? と思ったのだ。


「お腹が苦しくて眠れない。もしかしたらお父さんと同じ病気にかかってるかもしれない」

 母にこう話すとすんなり「病院に行ってきなさい」と言われた。


 この日は平日だったため、有給を取って地元の医院へ行き診察を受けた。

 超音波エコーで腹部を診ていただいたのだが、この時点で診断結果がすぐには出ないので、翌日また来てもらえないかとの事。

 そのため、次の日も午後半休を取って医院で診察。

 先生から、腎臓だけでなく、肝臓にものう胞が複数見つかったため多発性嚢胞腎の疑いがあるとの診断が下った。


「もっと大きな病院で診てもらって下さい」と言われて隣りの市にある総合病院を紹介された。

 ありがたい事に総合病院への診察予約は医院の看護師さんが取って下さり、服用薬は利尿剤を処方された。



 家に帰り母に診断結果を報告。 


「そうか、やっぱり出てたか。お前たち姉弟のどっちかにお父さんと同じ病気が出るんじゃないかと不安だったんだけどな」

 母は残念そうに言った。

 でも私は病気の疑いがあるという結果を知れた事でだいぶ気持ちがラクになった。

 気持ちの落ち込みもなくなり、その意味での不眠もなくなった。

 確かにうつの症状だったので正直シンドかったし、この苦しさからラクになりたいと思う気持ちもわかったし、うつは誰でもかかる病気なんだと理解した。

 お腹の苦しさは処方してもらった利尿剤のおかげで少し和らいだが、眠りは浅かった。


 ちなみに今現在も弟には多発性嚢胞腎の症状は出ていないのでだいぶ安心はしてる。


 こうして8月末、総合病院へ。

 受付で医院の先生が書いて下さった紹介状を提出し、しばらく経って内科へ向かうように指示された。

 内科へ着くと作ってくれた診察カードを受付に提出。

 どれぐらいの時間で呼ばれたかは忘れたけど、診察室で迎えてくれた先生は肝臓専門の男性医師だった。


 まずは多発性嚢胞腎か調べるため、胃と腸の内視鏡検査とCT検査を受ける事となった。

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難病にかかって12年・・・発症から現在までを振り返ってみようと思った ゆうき里見 @yuki-gesiki

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