第7話 本能寺4

「思い通りのシーンね。なんか、ほっとしたわ。」

「そうだな」

 竜一も相槌あいづちを打つ。

 だが、そうしているうちにも火はすぐそこに迫ってきた。明智の兵たちも火をもろともせずに迫ってくる。

「おい、そろそろこの夢めるんじゃないのか?」

「そうね、そろそろ帰らないとね」

 カレンがパネルをポケットから出そうとした時だった。部屋の一部が焼け落ちたのだ。カレンはびっくりしてパネルを落としてしまった。しかも、パネルがカレンの足に当たり、次元間帯空じげんかんたい機能がオフになってしまったのだ。カレンと竜一は信長たちの前にその姿をしてしまった。

敦盛あつもり」を舞い終わった信長が、切腹の準備をしているところに変な二人が突然現れたのだ。

「おみゃーたちはなーに者だきゃー?。あけーちの手の者だきゃー?」

 変な名古屋弁で黒人の見上げるような大男が迫ってきた。信長の家来、弥助やすけである。

「いえ、あっしはただの通りすがりの者で決して怪しい者ではござんせん」

 竜一がおびえながら言う。

 カレンが落としたパネルを拾い上げようとしたが、弥助に取られてしまった。

「何だきゃーこれは?」

 弥助はパネルを見ながら首をひねる。

「どうでもいいけど、それ返してよ」

 カレンは、パネルを取り戻そうとするが、弥助は返さない。

主等ぬしらは、明智の者ではないというなら、何処の者じゃ?」

 信長が迫ってきた。

「何処のかと言えば、平成の者よ」

「平成?」

「そう、400年後の年号よ」

「・・・・・・」

 信長は、痛みをこらえながら、

「これから切腹と言う間際まぎわにこのようなたわけに出会うとはのう。たわけ冥利みょうりに尽きるだぎゃ」

 と言うと、薄笑うすわらいを浮かべた。

「それ返してよ」

 カレンは、また弥助に言った。だが、弥助はニヤリと笑うとパネルを握り、そして遠くに放り出したのだ。

「ああ、もうおしまい」

 カレンは絶望の声を発した。

 火は燃え広がり、本能寺全体を包み始めている。そして、ついに煙硝蔵えんしょうぐらにも火が付いた。本能寺は、鉄砲に使う火薬の貯蔵庫と言う役割も持っていたのだ。寺全体が間もなく大爆発を起こすだろう。


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ワープ 05 ~タイムマシーン~ かわごえともぞう @kwagoe

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