第4話 本能寺

 ほどなく、時空転送装置の取付も完了した。何時いつももの如く、開発過程等に関する記述は割愛させていただきます。

 カレンは、何度かテストをしてその安全性を試した。12時を示している時計を30分前の過去に送り込む。すぐに時計は現れたが、時刻は12時30分を示していた。時計は瞬間移動したのではなく、30分過去に移動しそれから30分経過して現れたことを示していた。

 

「パパ、ピアノから帰ってきたら今日は本能寺に行くよ」

 カレンは、そう言うと元気にミッキー初音のピアノ教室へ行った。

「本能寺って何よ?」

 ジュリーが、怪訝けげんな顔で尋ねる。

「お寺だよ、お寺。歴史研究部の活動の一環だよ」

「どこのお寺?」

「京都だよ」

「京都まで・・・泊まるの?」

「片道3時間もかかんないから、日帰りだよ」

「ふーん、気を付けてね」


「おーい、何してんだ。そろそろ出かけるぞ」

 竜一は、玄関に立ってカレンを待っていたが、なかなか家から出てこない。

「こっちよ、こっち」

 カレンが塀と家の間から顔を出して手招きしている。

 竜一が付いて行くと、カレンは裏庭の倉庫に入っていった。続いて入ってみると、そこには、フード式ヘアドライヤーのような物が二つ付いた台が置かれてあった。傍には何やら複雑な機械が置いてある。

「この下に立って」

 カレンが指さしたのは、右側のフード式ヘアドライヤーの下だった。そこに立つとすぐにカレンが左側のフード式フード式ドライヤーの下に立つ。


「本能寺の変は、えーと、旧暦の天正10年6月2日早朝だから、西暦に直すと…えっと、1582年6月21日早朝ということで、早朝というのがよく分からないから、一応、午前4時位にしとくか。場所は今の本能寺じゃなくて、六角大宮ろっかくおおみやということだから、えーと……」

 カレンは、何やらぶつぶつ言いながら、持っているパネルをいじっている。

「よし、これでOK! 行くよ!」

 カレンはそう言うと、パネルを人差し指でトンと叩いた。

 二人の身体が青白い光で包まれ始め、やがて消えた。

「おい、ここは何処どこだ。カレン、何処どこにいる?」

 竜一は、突然周囲の景色が漆黒しっこくの闇に変わったのであわてふためく。

「そばにいるよ。大丈夫よ。本能寺に着いたみたいね」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る