1554年 家操21歳 雑賀衆

「大和もデカくなったな」


「家操叔父様!」


 14歳になりすっかり大きくなった内葉大和こと内葉家和(家操は相変わらず大和と呼んでいるが)は今日も城で政務をしていたので声をかけた。


「大和も今ではしっかり武士だな」


「初陣で鉄砲をぶっ放す羽目になるとは思いませんでしたがね……椎茸も順調に育っておりますよ!」


「そうかそうか! もうそろそろ年貢の徴収も始まるからな。今のうちに休んでおけよ」


「はい!」


 性格は大型犬の様に人懐っこく、かつ勇敢なので俺の息子達も大和にはよく懐いていた。


「大和は結婚はしないのか?」


「いえ、まだ考えておりませんね。一人前と胸を張って言えるようになるまでは」


「その考え方も良いが大和、お前さんの弟の事を考えてやれよ。大和が結婚しないと武蔵達も結婚しにくいんだからな」


「う、うぐ……気をつけます」


「俺の下でしっかり領地運営を学んでくれよ」


「はい!」


 すると伊達アニキが書類を抱えてやって来た。


「家操に確認が必要な書類が山程あるんだが」


「悪いなアニキ……あな、アニキは俺が出世してどんどん偉くなるのに嫉妬とかねぇのか?」


「あるわけねぇだろ。俺の能力ならばなれたとしても足軽組頭程度なのに弟のお前のお陰で殿の血縁にもなれたんだぞ。津田領地でも一門衆として城代や武将として100名以上を指揮する立場だ。正直能力以上の地位に来てしまったとも思ってるんだぞ。そんな俺が引き上げてくれた弟に嫉妬? ありえねぇだろ」


「アニキらしいわ。アニキは津田姓に変えなくて良いのか?」


「俺が内葉を継がねえと内葉の家が途切れてしまうからな。あとは線引だ。家操が主で俺は家臣だ。これを明確にするためにも津田は名乗れねぇよ」


「……悪いなアニキ」


「今度酒でも飲もう。最近旨い酒屋ができたからそこで一杯飲もうぜ」


「大野居酒屋って名前じゃねぇよな?」


「お? 知ってるのか?」


「アニキ、そこ俺が作った酒と料理を出す店だよ」


「お前どこまで手を広げるんだよ!」


「領内は俺の手が入ってない方がすくねぇよ……今度行こうな」


「ああ! 大和も連れて行くか」


「そうだな。大和も来い。酒の味を覚えさせてやる」


「俺は甘酒くらいでいいよ」


「まだまだお子様か。元服してるんだから下戸じゃなければ付き合いで飲まされることになるんだから慣れておいた方がいいぞ」


「はーい……じゃあ家操様の今後の展望とかを教えてよ! 忍び達を重視している理由とかも知りたいしさ!」


「いいぞ、色々教えてやる」


 廊下で話し込んでいると評定衆に出世していた鳥居元忠に3人揃って注意されるのであった。








「これより望月党は津田様の配下として雇っていただきたく」


 甲賀と契約を続けており、多聞丸や忍び達が普通の武士いや、武将の様に取り立て、忍び仕事に対しても差別をしないし、危険な仕事よりも情報を持ち帰ることでちゃんと評価してくれることで甲賀では津田家への仕官を目指す忍びが山程出てきてしまったらしく、俺が200人くらいなら新しく雇うぞと言うと前に望月党の上忍として対応していた望月保高殿自らが忍びを増える忍びをまとめる為に甲賀を抜けて津田に完全に鞍替えをすることにしたらしい。


「人手不足で助かる! 早速だが畿内でも傭兵として名高い雑賀衆の登用することはできないか」


「雑賀衆ですか……鉄砲の扱いが上手いとされた者達ですな」


「若くて鉄砲の扱いが上手い者達に1人年収で30貫与えるし、鉄砲撃ち放題、武士として将来的には土地も与えるという条件で、鉄砲鍛冶も誘致したい。一人引き抜けるごとに関係した忍びに2貫与えることにしよう」


「な! それほどの大金を! かしこまりました! 沢山雇ってきまする!」


 活動資金として1万貫を渡して引き抜き工作を行う。


 これで将来の雑賀衆の力を削ぎつつ鉄砲隊の拡充ができるだろう。


 まぁそう上手くはいかないと思うが、雑賀衆というコネが何かに使えるかもしれないからな。


 あんまり期待せずに待っておこう。







「鈴木孫一です! 鉄砲撃ち放題と聞いて来ました!」


「鈴木重秀で、です! 若輩ですが頑張ります!」


「鈴木義兼です! 鈴木孫一兄さんと一緒に頑張ります!」


 おい、雑賀孫一と思われる人物全員来たんだが? 


 他にも歴史に残っているのだけで鈴木孫一の副将として各地を転戦した的場昌長、鈴木孫一の一番下の弟の鈴木孫六、石山合戦では雑賀別働隊で活躍した宮本兵部、雑賀衆でもまとめ衆の家柄の栗村三郎、雑賀孫一のライバル土橋守重等雑賀衆の将来の幹部クラスがゴロゴロ……総勢300名も引き抜いてきた。


 代表して俺と同じ年の孫一曰く畿内で経済が大混乱に陥り、更に不作で昨年はなんとか食いつなぐ事が出来たが、今年も不作で人を売らないと生活できないかもしれないという時に俺の話が飛び込んできたらしい。


 そしたら家の長男等の家を継ぐ予定の者……場合によっては鈴木家の様に家長と一番下の小さい弟を残して新しく家を建てる勢いで出した者までいた。


 それだけばら撒いた1万貫に飛びついたとも言える。


 銭不足で酷いことになっていた畿内で大量の銭の投下はそれだけで大きな影響を与えたと言える。


 特に傭兵として稼いでいる雑賀衆は各大名が銭不足で傭兵を雇う余裕が無くなり、失業状態になってしまっていたらしいので、銭を払うし、長期雇用……いや正社員かつ終身雇用をしてくれるとなれば若者達はほぼ飛びついたのであった。


「年に30貫も本当に支払ってくれるし、訓練で鉄砲撃ち放題なのか?」


「ああ、ぜひとも鉄砲の腕が日ノ本一と噂される雑賀衆に頑張ってもらいたい! 話を聞くに手持ちの金も心許ないだろう。前金として1人10貫と住む場所を贈ろう。これから活躍してくれよ!」


「おうおう! 任せておけ! 寺の坊さん達も俺等が困っている時になんも手助けしてくれねぇからな! 仏敵と織田家は言われているが、織田家の家臣の陪臣なら関係ねぇ!」


「あら、三河の件は畿内ではそれほど影響を与えてますか」


「ああ、本願寺のお偉いさんが三河一向宗の寺を殆ど破壊したのを知って信長様を仏敵扱いしていたぜ。まぁ畿内の混乱で皆困窮して宗教により傾倒する者もいれば雑賀衆の様に寺からも見放された地域もあるがな」


「ん? お偉いさん? 門主様ではなく?」


「門主様はまだ13歳で政治ができる年齢でもないからな。門主様の奥方が政治の実権を握っていたはずだぜ」


「ふむ……ありがとうございます。参考にしますね」


「おう! じゃあ鉄砲撃たせてくれよ!」


「ええ、いくらでもどうぞ」


「おい、お前ら誰が的の真ん中に一番当てられるか競争な! 津田の兵に負けたらわかってるよな」


「おやおや、鹿之助、家の鉄砲衆の実力を新人に見せつけなさい」


「おう!」


 こうして射撃大会が開かれたが、津田兵は雑賀衆の鉄砲の練度に、雑賀衆は津田の使うポリゴナルライフリングされた鉄砲と弾丸に驚愕し、相互に競い合った結果リアルゴル◯13が量産され、そこに量産型の長銃(狙撃銃)が配られた事で1キロ先の的に当てられる者が量産され、恐怖の狙撃部隊が組織されることになる。


 そして雑賀から来た鉄砲鍛冶師が増えた事で日産10丁まで鉄砲の生産量も拡張することとなる。

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