1553年 家操20歳 津田海軍

 領内での論功行賞まで時間を遡る。


 佐治旧領を貰った事で所領が広くなったので部下の給料も上げなければならない。



 まず大将を射抜き、一番手柄の内藤正成は1000石に加増。


 家老である中村鹿之助と林龍次郎も500石ずつ加増させ、新しく家老に前田利虎と本多正信と石川数正の3名も武功と内政面での活躍で250石ずつ与えて引き上げた。


 で、俺は重臣以外には領地ではなく金で報酬を支払うと宣言し、領地管理は重臣の領地も含めて津田家が執り行い、それによる生産性を効率化して他家より多く銭払いをすると宣言した。


 まず一番下の足軽は年収10貫、足軽組頭や奉行衆は年収30貫、足軽小頭と奉行頭は年収50貫、足軽大将は年収100貫、評定衆は年収150貫、それ以上は重臣として土地か銭を各々交渉という形だ。


 不満が出るかと思ったが、足軽達は給料は変わらないし、武器は津田家から支給されて負担は無いし、昼食と夕食は津田家が経営する食堂に行けば給料と一緒に支給される食券(木製の小さな札)を渡せば食べられる。


 しかも長屋に住まわせてもらえるので1貫でも十分に生活することができた。


 日頃の訓練の真面目さと軍功があれば組頭、足軽小頭くらいにはすぐになれるし、30貫あれば大家族でなければ家族を養っても余裕があるし、足軽小頭になれば自分の家を持つことも可能だ。


 武芸に秀でてなくても奉行衆として出世できる道筋も提示しているし、奉行頭は各種工場長とかもその役職名で言われるので工場長は年収50貫は硬い。


 特別報酬(ボーナス)として役職に応じて1貫から50貫追加で支払われたりするのでそれを合わせると1年で12貫足軽でももらっていることになる。


 そういうのを書として明文化もこの時行った。


 で、熱田や津島、大野の商人見習いや尾張の各寺を巡り、字や算術がある程度できる者を集めて奉行衆を増員し、増えた領地の年貢徴収という山場を越えることができた。


 財務状況がわかる重臣達は津田家の権益を使って先物取引……米転がしという名の現代のFX取引を当主がして大勝ちしているのを見て凄いハラハラしていたが、大勝ちが確定して利子を支払っても40万貫の利益を出したことを知ると仏様の様に崇めだした。


 その金を使い各種工場を更に増築。


 常滑城を破壊して工場に建て替えたり、大規模な造船所を建築したりして建設特需で金をばら撒いた。


 お陰で津田家が管理する工場や施設を書き出すと、味噌工場3棟、醤油工場2棟、砂糖工場1棟、油工場10棟、蝋燭工場1棟、石鹸工場4棟、肥料工場5棟、紙工場5棟、武器工場3棟、農具工場2ヶ所、木材加工場4ヶ所、製塩所5ヶ所、養鶏場5ヶ所、牛牧場5ヶ所、馬牧場2ヶ所、酒造場5ヶ所、……他にコンクリート工場、製粉施設や造船所、大野港、娼家、オナホール工場、果樹園、椎茸栽培地等など……。


 管理する施設が爆増し、行政官を確保しなければいけないので商人の弟子や部屋住み達の大量徴用に繋がった。


 でも自前の港を持った事で三河から伊勢までの海域には海賊らしい海賊も出ないので将来遠江を領有したら海を通じて利益を出すことも可能だろう。


 今回工場建設中心だったが、来年には道をコンクリートで舗装することもできるだろうから更に生産性や物流が改善する。


 道が綺麗になればその周りで商人が店を出して地域が活性化するし、土地代で税金と寄進で金を受け取ることができる。


 しかも楽市なので三河から流れてきた流民をこき使う事も出来るし……。


「ただ今回はなんとかなったけど奉行衆が遠江を貰ってもパンクするな。学校を建設しねぇと」


 俺は園城寺和尚や五位様、大黒兄さんに足利学校の様な文官や武官を育成する施設を建設したいので協力を要請した。


 和尚はお寺を継ぐことのできないお坊さんや五位様は尾張の豊かさに釣られて移住してきた公家を、大黒兄さんには商売に失敗した商人を教師として雇い、西乃口村に学校を創設することとなる。


 で、壊滅した水軍衆を再現するのに佐治一族庶子で船頭をしていた佐治為孝という男が路頭に迷っていたので、遺恨を流して登用した。


 この佐治為孝は海上方面から大野港を攻撃しようと企んでいたらしいが、海が荒れてしまい出港出来ずに立ち往生している間に常滑城が落城し、市民に紛れていたが、住民の通報により佐治一族の生き残りとして捕縛され、大草城に連行された経緯がある。


「殺すんなら殺せ!」


 と最初は凄んでいたが、俺が水軍再建及び水軍を海軍化させて、領主から金銭を受け取ることで生活する雇われ武士とならないかと誘った。


 そして俺は地球儀を彼に見せた。


「海は広い。人は大地の上で生きていかなければならないが、海を航海することで物流は大きく変わる。津田海軍を一緒に作らないか」


 と誘うと、誘いに乗り、そのまま造船の話をする。


「帆船の形を三角形と四角形を使い分けることで潮の流れが逆でも進むことができる。南蛮人はそれを使うことで遠くから日ノ本にやってきているのだ。で、南蛮船はまだ作ることはできないが、船を作るときに小さな模型を使うことで船の浮力を確認することができるぞ」


「海上で税をなぜ取ってはならないのですか?」


「税をいちいち取っていたら物流が滞る。それよりも商人を気持ちよく通らせた方が商売が活発になり銭の動きが速くなる。銭の動きが速くなればその分地税や寄進で回収できるようになる。君達海軍は税の取り立てをする手間は無くなり、領主である俺から金が支払われるから生活もできる。暇な時は漁師として魚を獲ったり、商人の代わりに商品の輸送を受け持ち、その対価として銭を受け取ればいい」


「なるほど!」


 言いくるめて、旧佐治水軍の船乗りを集めてもらい、希望者を海軍に編入させて、海軍希望の若者を募り、沿岸警備程度の海軍を創設した。


 津田海軍は基本的に俺の工場で作られた製品を熱田に運ぶ輸送任務を行ってもらい練度を上げ、海上で戦闘する為に鉄砲の扱いを学ばせたり、雨天でも鉄砲が使えるようにと亀甲船の様な屋根付きの船や甲板、船室、倉庫の三層に分けた船を作ってみて性能実験をしたりと金に物を言わせて新しい船を作り続け、帆の改良等で多くの物資や兵を輸送できる輸送艦の開発を続けるのであった。



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