1548年 家操15歳 第二次小豆坂の戦い
俺は今回那古野城兵として出陣し、直属の上司は平手の爺様が担当してくれることになった。
俺は勿論評定に参加できる権利は無いのでどの場所に配属されるかは平手様の決定に従うが、どうやら軍の先鋒ではないが前目の位置を進むことになりそうである。
平手様が鉄砲隊という部隊がいるので使ってみてはいかがですかと織田信秀様に進言したらしく、陣を展開する際には右翼側に陣を置くことになりそうだ。
俺は平手様の横で
「此度の戦はなかなか厳しいものになりそうじゃ」
と平手様が呟き、何でか聞くと
「今川は1万の大軍を動かしたと聞く。こちらは4000ほど、水野氏の援軍があるとはいえ、あちらも松平衆が追加となる。そうなると兵数差は約2.2倍ほどになるじゃろうて」
確かに少々厳しい数だ。
あとは先手で良い位置を確保できればまだ戦い様はある。
こちらは岡崎城を落としているので万が一は岡崎城に逃げ込むという選択肢も取れる。
ただ今回の戦の目的は松平衆の壊滅であり、今川を退かせる事が出来れば勝ちだ。
何とか上手く勝ち戦に持っていければ良いのだが……。
三河を進み、岡崎城に到着して休憩をする。
ここで重臣達はまた作戦会議をしているらしいが、俺は夜にホームセンターにあった双眼鏡で遠くを見ていると森の一部が動いているのに目が行き、平手様に直ぐに報告をした。
斥候を放つと夜間行軍で今川·松平連合軍は小豆坂の丘上に陣を形成していることが判明し、早朝に急いで小豆坂の丘下に織田軍が展開した。
敵の方が良い位置を取られて劣勢ながら、敵の数が想定よりも少なく、5000いるか居ないか程度であり、織田信秀様は敵先鋒が強行軍で陣を形成したと判断し、本隊が来る前に有利な陣地を取ってしまおうと攻撃を開始した。
「鉄砲隊前に」
他の箇所では弓合戦が始まっている中、俺の部隊は盾隊に守られながら二列になり、射撃姿勢を取る。
「放て!」
バババババン
平手様の号令で火蓋が切って落とされ、鉄砲が火を噴いた。
高所とはいえ矢が届かない位置からの一斉掃射。
弓を構えていた敵の1部隊が文字通り消し飛んだ。
「は?」
「「「は?」」」
鉄砲の威力を正直理解しているか怪しかった者や実際に鉄砲を放った俺の部隊の者達でさえ、敵が血だらけになって敵の1部隊が消し飛んだのに衝撃を受けた。
「次弾装填急げ!」
俺が大声で叫び、次弾の装填を急がせる。
敵も慌てて弓を放ってくるが全く届いておらず、次は俺の号令で発射された。
ババババババン
音が鳴り響くたびに敵兵が倒れる異様な光景に他の部隊も混乱が生じ始める。
しかし、勇猛な三河兵達は山を下って突撃を敢行し始めた。
俺は偉そうな鎧を着ている敵を狙い、狙撃すると、馬の上に乗っていた敵将が胸を抑えて落馬する。
何故か突撃していたハズの三河兵達も混乱し始め、突撃の衝撃が緩くなった際にこちらはまた掃射を開始する。
鉄砲が放たれるたびに敵はどんどん混乱していき、5発目の掃射をすると松平の旗差し……三河兵達は潰走を始めてしまう。
そんな三河兵の潰走に巻き込まれる形で今川兵の陣形も大混乱となる。
「かかれぇ!」
聞き覚えのある(柴田勝家)の大声で織田軍は突撃を開始し、陣地不利ながら丘上の陣の奪取に成功し、丘上を奪取すると上から見下ろすと今川の伏兵が混乱しているのが見えたので弓や鉄砲で攻撃を開始した。
伏兵の今川兵も潰走し、その潰走した兵が今川本隊になだれ込み、本隊にまで混乱が生じ、今川軍は裏崩れが発生してしまう。
そこに丘上から織田軍が雪崩込み、今川軍は軍師の太原雪斎の巧みな指揮で被害を最小限に撤退し、織田軍は一気に三河から今川軍を追い出すことに成功するのだった。
まさかまさかの第二次小豆坂の戦いは織田軍の大勝利で、この時織田信秀含む織田家臣達は松平衆は遠江に落ち延びたと思ったのだが、戦場で首実検が行われると、俺の担当していた場所にて俺が狙撃したのが松平広忠であることが判明し、射殺された松平衆の名のある家臣や重臣がことごとく射殺されていることが判明。
わかっているだけで奥三河3当主、城主クラスが5名、重臣15名、松平一門5名、足軽大将20名他580名が射殺されており、松平広忠が討ち死にしたことで混乱が広がり、殿の周りに重臣達が集まった所を鉄砲隊の掃射が直撃して甚大な被害が発生したと思われる。
事実上三河の統治を行っていた頭が根こそぎ戦死したことになる。
首実検でこの事が判明すると信秀は功績の目録を付け終わると同時に奥三河に侵攻し、当主不在で混乱していた奥三河御三家は碌な抵抗できずに落城し、織田信秀による三河統一が完成するのであった。
今川軍はそれほどダメージは無かったが、三河という緩衝地帯を織田家がごっそり持っていったことにより織田家と今川家の対立は激化。
信秀は三河統治の為に信長の弟、信行を岡崎城に入れ、尾張を織田信長が、三河は織田信行が信秀に何か起こった場合分割統治をする取り決めが行われるのであった。
これが織田家最大の内紛になるとは知らずに……。
「内葉家操」
「は!」
「この度の戦誠大活躍で敵将松平広忠を始め、多くの将兵を討ち取った。息子信長からも武士として足りうる器があると聞いている。よって常滑郡北部の大野村1000石の領土を与え、足軽大将に任ずる」
「は、はは! ありがとうございます!」
功労評定で、俺は足軽の身分で信秀様から呼び出され、信長様からの推薦もあり、常滑郡の大野村という海に面し、熱田から35キロほどの場所にある村を知行として渡され、更に足軽大将にまで出世した。
普通足軽大将は足軽→足軽組頭→足軽小頭→足軽大将となるので3階級昇進である。
流石に城持ちとはいかないが足軽からだと異例の大出世であり、鉄砲で大活躍したことから鉄砲家操とか鉄砲鶴、火縄の佐助と呼ばれ、織田家の中で一躍時の人となるのだった。
俺は真っ先に竹千代の所を訪れ、竹千代の父親を討ち取ってしまったことを詫びたが
「武士である以上戦場にて討ち取られることはお有りでしょう。我が父の最期を教えくだされ」
そう、父親が亡くなったのに立派に応えられた。
俺は戦場で松平広忠が味方を鼓舞し、敵陣に勇ましく突っ込んだ際に私と目が合い、鉄砲で討ち取ったと少し盛って話すと涙を流してそうですかと悲しんでいた。
「松平家はどうなるのでしょう」
問題はそこだ。
今回の戦で三河で頭を張っていた者達や松平家含めて多くの家が没落してしまった。
織田としては三河統治に竹千代を使おうと思っていたが、あまりの頭となる人物たちの戦死で竹千代を担がなくても織田家から代官を派遣すれば事足りる様になってしまっていた。
なので今竹千代の立場は凄いあやふやなのである。
「竹千代様は三河の統治で必ず必要になるお方、いまは勉学をし、松平家の御子息として恥じない行いを心がけください」
そう伝えるしか俺にはできなかった。
「よくやったな鶴! 活躍は平手の爺から聞いているぞ!」
「はは!」
信長様は上機嫌で俺にそう言ってくれた。
濃姫との関係も良好な様で信長様の側でニコニコしながら俺を見ている。
「しかし数的劣勢をひっくり返し、敵将の松平広忠や多くの者を討ち取るとは天晴だ!」
「ありがとうございます」
「しかし、ここ那古野から所領が遠くなるのが寂しいな。毎日は会えなくなるか……小麦が駄々をこねておったぞ」
「いや、あはは……」
「余も鶴と衆道ができないのは寂しいぞ」
「あはは……信長様、これで織田家は尾張三河を治める大大名となりましたな」
「うむ、まぁ親父殿は俺を尾張、弟の信行に三河を統治させようと思っているらしいがな……親父殿に何かがあれば家中が分裂するぞ」
「もしその様な事が起こっても私は信長様に忠義を誓いますのでご安心を」
「うむ、愛らしいな鶴は! 常滑といえば横は水野一族の所領と接しているから上手く付き合え、あそこと揉めると厄介なことになるからな」
「はい、気をつけます」
「でもこれでようやく武士になれたな! これでお前を見下す奴も減るだろう」
「いやいや、私は成り上がり者として色々な方にやっかみを受けることになりましょう。まぁ実力で黙らせますがね」
「おお、言うではないか! 1000石だと足軽は100人、武士も10名くらいは雇えると思う。与力として誰か居るか?」
「与力ですか……とりあえず今は考えてませんね。まぁ新しく発掘して育てていきますよ」
「うむ。鶴ならそういうであろうと思ったわ。……ここだけの話し鶴に小麦を嫁がせたいと思っている。アヤツの母親の身分が低く、家臣に下賜するにも適任が居らぬからな。余からも親父殿と交渉してみるが、小麦と仲の良いお主なら小麦を託せるのだが」
「小麦姫と婚姻できるのであれば願ったり叶ったりであります。妻にも言い聞かせておきますので」
「うむ、楽しみにしておけ。あと牛乳が毎日飲みたいからお主の領地で牛を沢山飼ってくれ」
「わかりました! そしたら牛乳よりも美味しい物を作って見せましょうぞ」
【実績 武士になるを獲得】
【実績 1000石領主を獲得】
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます