元服の章

1543年 家操10歳 就職成功

 熱田の長屋に住み始めて数日。


 まだ俺が射精することができないので夜の大運動会は開催していない。


 智の年齢的にもあと5年は成熟させる必要があるだろう。


 手元には100貫分の札が60枚。


 就職活動をする上で必要なのはこの時代はいかに戦えるかである。


 算術とかが使えるとかそういうのは身内や譜代家臣を育てて育成する時代。


 部外者をリクルートするのは戦えるというのがあって始めて成り立つ。


 こういう時に○○流免許皆伝とかそういう看板が効いてくるが、一端の農民がそんなのを習うことはできない。


 五位様との鍛錬でも農民としては恵まれている方であるし、何より俺は10歳……実年齢だと9歳児である。


 そんなんで斬り合いで武功を挙げられるのは九州の薩摩武士くらいである。


 できれば信長様に拾ってもらえたら最高なのだがそれは高望みか。


 まぁ愚連隊を作る時もまずは武士の次男三男坊から始めるから農民はお呼びでないわな。


 それでも形は整えなければならない。


 で、武器も良い物を買って長く使うという選択肢もあるが、体ができてないので武器に振られてしまうのが欠点で、なんならコンパウンドボウで射ったほうが活躍できるだろう。


「まぁとりあえず武器からか」


 俺はとりあえず熱田の武器屋に向かうことにした。


 刀が何本も売られており、店主に頑丈でとにかく斬れる刀が欲しい、数打ちでも良いからと聞くと村正というブランドを紹介された。


 刀も槍の穂先も村正一派が作ったとされる数打ちで、頑丈で切れ味は良いが美しく無いと評価を少し落としていた。


 村正の評価が急激に上がってくるのは約10年先で、信長が愛用し始めた頃から戦国後期には実用刀としては最高という評価になっていく。


「本差が1本5貫、脇差しが1本3貫、槍は1槍3貫になるがどうする?」


「予備含めて全て2本ずつ買います」


「毎度あり!」


 ただやっぱり10歳の体では本差を振り回せる筋力は無いので、基本脇差しだけ差すスタイルになるだろう。


 ただこれでホームセンターの駐車場で、実際の刀や槍で素振りができる。(流石に長屋前とかだと危なくて素振りはできない)


 今までできなかった1文付き(糸で垂らした1文銭の穴を槍で突く)の練習ができる。


 目指せ15歳で一人前! 








 防具の方は自作した方が動けそうだ。


 足軽は胴丸と陣笠を被って突撃していく。


 ただ防御力はお世辞にも高いとはいえないので、俺はホームセンターの工具を使ってチェーンメイルを自作することにした。


 チェーンメイルの素材になりそうな金属はそこら中に転がっているし、チェーンメイルの上に鎧を付ければある程度の防御力にはなるだろう。


 チェーンメイルの防御は防刃性の他にぎっしり詰める事で矢に撃たれてもある程度距離があれば矢じりの大きさで通さなくなる。


 これが革製の鎧だと貫通するが、チェーンメイルの上に革製の鎧を身につければ付けている箇所は矢に怯える心配は必要ないだろう。


 ただ刀で斬られたではなく叩かれた時は衝撃をもろに受けてしまうため、革製の鎧を一緒に着込む必要がある。


「よし、とりあえずできた」


 スボンは足首まで守り、ベルトで下半身を止めて、上半身も肩に重さが全て行かないように胸と腹をベルトで重さを分散する構造だ。


 これならばベルトを外せば直ぐに脱げるし、長期戦でも対応可能。


 身長が伸びても継ぎ足しながらベルトの調節をすればOKである。


 流石に革製の鎧は市販されているのを買ったが、これで武具は揃った。






「就活せなあかんけど就職してない今だからできる事とかもあるか……せっかくだから忍者とかどういう人物なのか見ておきたいなぁ……」


 今現状五位様の下でお世話になっているが、アルバイトをずっと続けるのも正直辛い。


 五位様的には売り込むにもタイミングがあるのでそれを待っている段階らしい。


「ちなみに売り込むとしたら誰なのですか?」


「領主織田信秀の嫡男辺りに売り込もうと思うが」


「吉法師様ですか?」


「よく知っているな。その人物だ。ただうつけ者と噂があり、信秀様が誰を後継者とするのかの真意を知らんとお家争いに巻き込まれるだけになるであろうからな。もう少ししたら儂が信秀様に礼法を教える場があり、そこに息子達も連れてくると言っておったからそこに小者として働いておればよかろう。まずは顔見せだけじゃな」


 五位様は俺が思ってるよりしっかり動いてくださっていた。


「それまでは自由にしていてよいが、鍛錬は欠かせるでないぞ」


「はい!」








 ある日熱田で買い物を智としていると


「なんだと業物の刀がこれっぽっちでしか値が付かねぇだと!」


「お客さん、これ錆びているではないですか! いくら元が業物でもこれじゃあ二束三文でしか売れませんよ」


「うるせぇ! お前! 俺に指図するつもりか! 俺はなこの前の小豆坂の戦いで首印を3つもあげたんだぞ! その俺様の言うことが聞けねぇってのか!」


「武士様おやめください!」


「うるせぇ!」


「「「きゃぁー!!」」」


 野次馬達が悲鳴をあげる。


 俺は心の何処かにあった正義感からか知らないが、体が勝手に動き、斬られそうになった商人の親父を助けていた。


「あわわわ」


「あん! なんだぁガキが!」


「お前の言い分はおかしい。どう見てもあんな刀を業物とは言えんだろう」


「あん! うるせぇ!」


「名を名乗れ! 俺は内葉家操。浪人だ」


「浪人だぁ!? なんだ主無しかよ! 俺は完出家家臣の竜巳っつうもんだ! 浪人風情が出しゃばってくるんじゃねぇ」


 ガツンと刀を振り下ろしてくる。


 俺は刀を脇差しで受け流し、地面に刀をはたき落とすために竜巳の手首に蹴りを入れる。


 ガツンと良いのが入ったと思うが、刀を落とすまでにはいかず、斬り返してくる。


 それも右上にそう様に刀を添わせる。


 柄の部分に当たり、刀が止まった瞬間に刀を手放し、懐に潜り込んで足払いで大勢を崩し、そのまま投げる。


 刀を握ったままだった竜巳は刀が地面に突き刺さり変則投げになってしまい、手首がゴキっという嫌な音が響いた。


 激痛で悲鳴をあげる竜巳を地面に転がし、そのまま寝技に持ち込む。


 絞め技で首を締め上げて、竜巳は泡を吹いて気絶してしまった。


「ふう、大丈夫ですか」


「た、助かりました……ありがとうございます!」


 パチパチと周囲から拍手が巻き起こる。


 脇差しを拾い、鞘に納めると拍手をしていた人混みの中から虎柄の毛皮を着た少年が取り巻きを連れて歩いてきた。


「見せてもらったぞ! 大人相手に大立ち回り、しかも相手を殺すこと無く無力化するとは! 良い! 欲しい! お前名を何と言う!」


「内葉家操です」


「そうか、鶴! お前も俺の部下になれ」


「つ、鶴ですか……もしかして吉法師様ですか?」


「いかにも! 俺が吉法師だ!」


「是非お供します!」


「うむ!」


 なんか喧嘩に手を出したと思ったら信長様に気に入られたてござるのまき……。


【吉法師(織田信長)の部下になった】

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