1538年 佐助5歳 川魚捕獲大作戦
『佐助頑張ってますか』
「あ、神様、頑張ってます!」
『でしたら神から天啓を与えましょう! 5歳でもできるやれることです!』
「おお!」
『まずは家族の評価を上げましょう! 家の事を手伝ったりして後々鶏を飼える様に頑張りましょう』
「鶏ですか。刻鳥として大切にされているので飼育は難しいかもしれませんが……」
『しかし、動物性タンパク質を定期的に得るためには鶏が最も良いのです。時代的に難しいと思いますが、頑張ってみてくださいね』
そう言われて、家族の手伝いとしてやったほうが良いことといえば水汲みだ。
川に水汲み行くのはとても大変であり、母さんや兄さんも辛いとよく言っていた。
5歳児なので力はあまり無いが水汲みで鍛錬にもなるだろう。
早速父さんに相談してみることにした。
「なんだ佐助、水汲みしてくれるのか!」
「うん、母さんや兄さんが大変そうだから俺がやるよ」
「そうかそうか! 助かるぞ。手桶は持てるか」
「うん!」
「川まで距離があると思うがゆっくりでいいからな」
「はーい!」
手桶に水を入れて水釜に組んだ水を入れていく作業だ。
水は飲水にも鍋等の料理や体を布で拭く為にも使う。
手桶を持ってゲートを開き、ホームセンターの中にあった一番長いホースで出入り口近くまで射出口を伸ばして水を桶に入れていく。
水が溜まったら手桶を持ってえっちらおっちら運び水釜に入れていく。
とはいえ5歳児の体なので運べる水の量も限りがある。
休憩をしながら1時間かけて水釜に水を満タンにするのだった。
【家族の評価が上がった】
神様から天啓を再び受け、自分の使える農地を確保できたらしろと言われたがとてもではないが無理だ。
農地は家族にとっての生命線で幼い俺に使わせられるような土地は無い。
となると近所を巡ってコネ作りをした方がいいだろう。
今の俺の体でできることといえば小さい子の子守りとかだろうか。
近所の日吉丸(秀吉)との縁を深めるためにも日吉丸のお世話を買って出よう。
「なかさん、木下のおっちゃん、今日の水汲みしてきたよ!」
「まぁ助かるわ! 智! 佐助君が来たわよ!」
智というのは秀吉の姉で後々の日秀尼と呼ばれる人である。
ちなみに俺と同じ5歳児だ。
「佐助! 一緒に遊ぼ!」
「うん、いいけど日吉丸の面倒も見ないと」
「えー!」
「悪いわね日吉丸の面倒も見てもらって」
「いや、たまに食事させてもらってますしこれくらいやりますよ! 木下のおっちゃんも早く治せよ」
「あぁ、悪いな」
秀吉や智の父親は最近戦に出て負傷してしまい体が上手く動かせなくなっていた。
徐々に弱ってきているので亡くなってしまうだろう。
おっちゃんもそれがわかっているのか家族を生かす為に親友の竹阿弥(ちくあみ)という男に俺が亡くなったらなかと再婚して欲しいという約束をしており、竹阿弥も了承し、なかのお腹の中にはすでに竹阿弥の子供が宿っていた。
お腹の子供が後々の豊臣秀長に当たる。
そんな一家を近所で友達の智が困っているからという理由で俺がよく手伝いに来ていた。
竹阿弥のおっちゃんとも何度か顔を合わせており、秀吉の物語に出てくるような意地悪な義父というよりはコミュニケーション能力が高いお調子者といった感じだ。
俺も智も竹阿弥のおっちゃんと仲が良かったりする。
じゃあなぜ秀吉が竹阿弥から嫌われたかと言うと秀吉の右手の指の数が原因だろう。
秀吉の指の数は産まれながらに6本で家族からも気味悪がられていた。
智が秀吉の面倒を見るよりも俺と遊ぶのを優先したがるのはそういうのが理由かもしれない。
俺は秀吉を紐でおんぶしながら智と一緒に出かけるのであった。
友達は何人か居るが、智の他には幸之助という中村に数軒しかない鍛冶屋の一族(別の一族として加藤清正が将来生まれたりする)の息子も幼馴染だ。
兄さんの伊達と合流して何して遊ぼうかという話しになり、俺は竹を使った川魚を捕らえる罠を作ろうと提案した。
「川魚が獲れる罠か……上手く行けば夕食が増えるかもな! よしやろう!」
兄さんの号令で親から借りてきた斧を持った子が竹を切り倒し、非力な小さい子が竹の節に穴を開けて魚が通るようにした。
出口は針で穴を開けて水が排水できるようにし、竹の罠が完成した。
あとは川魚が好むミミズとかを捕まえてきて細切れにし、餌を奥に仕掛ければ完成である。
早速川に沈めて、裏山に遊んだ後に引き上げてみると、ドジョウやうなぎ、小さな魚が入っており、皆大興奮。
「大漁じゃねぇか! おい、明日からもっと罠仕掛けようぜ!」
そう兄さんが言ったことで川魚の罠作りが子供達の中でブームとなった。
数日後にはおかずとして川魚が並ぶようになり、食卓が少し豪華になるのだった。
【健康が上がった 家族の評価が上がった 子供達の絆が上がった】
今日は野山で散策中。
兄さん達に紛れて山菜の採集をしていた。
「山菜! 山菜!」
「お、ヨモギにふきのとう! タケノコもいっぱいあるじゃねぇか」
智と幸之助も一緒だ。(秀吉も俺の背中にいる)
遊び永は山菜集めをするのが子供達の流行りであり、お腹いっぱいに食べられるというのはこの時代だと贅沢であった。
美味い物を食べるというより食べられるだけでもありがたいと思えという時代である。
そのためどんどん舌が馬鹿になっていっていると思うが、こんな状態で天ぷら等を食べたら、そりゃ死ぬまで食うわな。(食あたりで亡くなったら家康さんは贅沢な死に方なのだろう)
「春先だから甘いのもはないねー」
「果実とかは秋だもんね」
「びわとかアケビ兄さんが取ってきてくれたけど美味かったな」
そんな事を話しているとワオーンと言う鳴き声が聞こえてきた。
「野犬か狼か……」
「危ないから逃げよう」
ガキの体で狼や犬に襲われたらひとたまりもなく、更にそれが狂犬病を持ってた日には死ぬしかない。
俺らは山菜採りを切り上げて下山するのであった。
山を下りると兄さん達も山を降りており、狼か犬の鳴き声がしたと言うと
「数日は山には入れねぇな。俺らでも危ないからな」
冷静に判断して大人達に相談することになった。
まぁ大人達も猟銃があるわけではないので弓を使える者達が山狩りをするに留まり、数日後には大丈夫と判断されてまた山で遊ぶようになるのだった。
ある日、俺と智は幸之助の家を訪ねていた。
「おーい幸之助」
「めんどー……なんだよ佐助に智」
「幸之助手先器用だから一緒に木工しないか」
「木工? 何か作るのか?」
「竹の罠よりも高性能な川魚の罠作ろうぜ」
「めんどくせぇ……しゃぁねぇなぁうちもやるか」
作り方としては木炭にもならない木材の切れ端に穴を開けて紐を通し、竹筒の入り口がパカパカ開くようにした物だ。
斜めにすることで魚が普通の竹筒よりも逃げづらくなるのだ。
「こうか? うーん上手くいかねぇなぁ」
「こうじゃない? でも魚って入り口が狭くても入るのになんで出ていかないんだろう?」
「さぁ? でもうち達のご飯になるからいいじゃん」
実際に投入してみると捕獲できる魚の数が増え、僕らは今までの罠を順次アップデートしていくのだった。
【健康が上がった ふくよかさが上がった 子供達の評価が上がった】
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