第1章・目覚め 2ー②
ヴェンデルは、確かに焦っていたのかも知れない。
一目惚れというものを、エドガーに出会って初めて知った。
その清らかなる存在、穢れない魂そのものに、理由もなく惹かれた。
誰にでも分け隔てなく情をかけ、当たり前のように己を犠牲にする。
並外れた運動能力にと、あれだけの剣の腕を持ちながら、決して驕る事なく、騎士の仕事ではない汚れ仕事も、文句を言わずに引き受ける。
そうしたエドガーの一挙手一投足が、ヴェンデルの心の琴線を震わせた。
だがエドガーは、こと恋愛に関してだけは、ガードが固かった。
自分の事を、異性愛者であると思っているからかも知れない。
ヴェンデルがそれとなく誘っても、素気なくかわされてしまう。
だから、ここは無理に己の感情を押し付けてはならないと思った。
無理なく自然に誘い、少しずつ気持ちを伝えていく。
そうしているうちに、エドガーからも好意を感じるようになり、心地よい関係が続き。
ゆっくりと間合いを詰めている間に、いつの間にか六年もの月日が流れていた。
今思えば、もっと早くにこの想いを伝えるべきだったのかも知れない。
「自分は同性愛者ではない」と拒絶されてしまうのではと尻込みしてしまい、気が付けば年月だけが過ぎてしまった。
もう自分には時間がない。
今年の末には、ロミルダとの結婚式を迎えてしまう。
ともすれば、ロミルダはもうウエディングドレスを作り始めているかも知れない。
本来なら、身の回りを整理してからエドガーに告白すべきなのは解っていたが、とにかく時間がなかった。
今日こそは、エドガーに告白する。
酒の勢いを借りて、己を奮い立たせたが、予想外にもエドガー自身が泥酔してしまった。
もしや今夜、想いを遂げられるのではという期待していたのもあって、ヴィンデルは六年以上も堪えていた己の欲望を、抑える事が出来なかった。
エドガーの肌に触れた途端に、タガが外れてしまい、その美しい体にむしゃぶり付いてしまった。
見事に割れた腹筋、引き締まった腰、縦に盛り上がった尻、その全てが美しく、目が眩む程に眩しい。
駄目だ、駄目だと、心の中で何度も叫んだが、艶かしく腰を揺らす淫らな肉体の前には太刀打ち出来ず。
何とか、最後まではせずに己を押し留められたが、それでも気が付けば身体中、ドロドロになるまで絡み合っていた。
素面に戻った後は、後悔しかなかった。
ちゃんと告白をして、受け入れられてから、触れ合うのを許して貰うつもりだったのに。
騎士としてこなして来た鍛錬など、己が欲望の前には何の意味もなかった。
明日は、起きたらちゃんと話をしよう。
受け入れて欲しい。
信じて待っていて欲しい。
必ず全てを整理して、エドガーを迎えに行くからと。
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