序章・全て呪われていた 2ー③

『私』はその後、三度生まれ変わった。

国や時代、性別も、様々だった。


ある時は男に生まれ、漁師だった。

決して裕福ではなかったが、不漁になる事もほとんどなく、家族で生きていくには十分な生活だった。

やがて隣町の商家の美しい娘と巡り合い、愛し合うようになる。

だが、娘は町長の息子に見初められ、二人は引き裂かれる。


自分の恋人を横取りしようとしていると、町長の息子に憎まれ、『私』の家が穫った魚は、町で一匹も買われなくなり。

どんどんと生活が困窮していき、水以外の食べるものもなくなってしまう。

最後には、何者かによって家に火を着けられたが、『貧しさに耐えきれず一家心中した』と判断され、そのまま葬られた。




またある時、『私』は商家の娘に生まれた。

『私』の笑顔には癒やされると、看板娘として町でも有名だった。

いつも買いに来る、美しい紳士と恋に落ち、相手が貴族であると分かっても、二人は身分差を乗り越えて想いを貫いた。

紳士に、婚約者が現れるまで。


『私』は、その婚約者に恨みを買い、雇われた男達に誘拐された後、強姦され、遠く離れた町に売り飛ばされるように捨てられ、娼婦になった。

多くの男達に踏み躙られ、一年で性病を患い。

 身体中に膿が溜まって、最後は物置小屋で野垂れ死んだ。




またある時、『私』は資産家の息子に生まれた。

だが、家の裕福さに驕る事なく、自立し、自らの力で学業でトップとなり、皆に羨まれるまでの存在になった。

そんな『私』とは、親友と言えるライバルがいた。

その『男』と凌ぎを削り、互いを高め合い、やがて想いを通じ合わせた。


だがある日、親友は学校のマドンナと言われる美女に魅入られる。

自らの男以上に能力のある男が隣にいるのを快く思わなかった女は、「『私』が盗みを働いた」と有りもしない罪をでっち上げる。

『私』は罪人という肩書きを背負い、結局は学校を辞めざるを得なくなった。

  その後、親友と社長令嬢が婚約したと風の噂で聞く。

その後、『私』が冤罪だったと認められたのは、二十歳で事故により命を落とした後だった。




そうして何度か生まれ変わって、いつしか自分が『輪廻』のような『呪い』に縛られるのだと気が付く。

命を終える直前で前世を思い出す。

『私』は、いつも恋をし、その相手に裏切られていた。

一生を共に生きると誓ったのに、恋人は『私』を捨てて、違う相手を選ぶ。


生まれ変わる度、毎回、立場も性別も違ってはいたが、ある一定の法則のようなものがあった。

自分が『二十歳までしか生きられない』と知るのは、その直前である事。

愛する人は、飛び抜けた美貌の人間である事。

そして、その恋人を奪う相手は、必ず燃えるような赤毛である事。

これは、どの人生でも同じだった。


だったら次の人生では、この二人に関わり合わなければ良い。

たとえ関わったとしても、恋をしなければ良い。

そうして接するのを避ければ、死ぬ事はない。


次こそは、生き延びてみせる。

絶対に恋はしない。

『私』は、そう決意して再び転生した。

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