第20話

と思って思い切り目を瞑ったけれど液体が顔にかかることはなく、そろそろと瞼を持ち上げる。



消臭スプレーを見つめる朱い眸が呟いた。




「液体切れか……くそ、外で使いすぎた……チィッ!!」




そんな舌打ちある?





「キオ、そういうところ甘いよね」


「まってまって、まずこれ人間用じゃないから発想怖いから」


「あぁ、うん、知ってる。だから掛かったらハノ、もう一度風呂に連れ込む気だった」


「拷問ですか」


「うん。とびきり甘い拷問を」


「…………ん?」





「……“はの”?」



「っ」




停止したところで視界の端に映り込んだ影。



マキの肩口から顔を覗かせたのはさっきの蜂蜜色の彼で、急に近くなった距離に思わず赤面してしまう。




「あーー。何ロウの顔見て赤面してんの」

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