第21話

「一枚じゃ風邪引くよ」




再びの困った笑みを浮かべられて、途切れ途切れにぎこちなく頷くことしかできない。


直視できない。




すると彼は私を自分の方へ引き寄せ、軽く倒れ込んでしまったのも気にしないどころか支えて、自らのパーカーを羽織らせてくれた。



柔らかくサイズの大きいパーカーは体温を纏ったままで、今彼から香ったのと同じ香りに一瞬で包まれる。




「ロウさ、すっげ良い匂いするよね。同じ柔軟剤なのに。何これフェロモン?」



「フェ?」




「ちょっと待て」




上から降ってきたキオの声に、三人して顔を上げる。




どういうわけか彼は小刻みに震えていた。




「あ」


そこで全然違う方向に何かを思い出したように、半袖になった彼が廊下の角を振り返る。



「来てくれる?ハノ」


「お?」



「待った……おい、それは、その汚らわしい身体に巻いているバスタオルは……まさか」

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