第18話

一瞬の間の後、角からは綺麗な顔立ちをした男の人が覗いた。



綺麗、って月並みの表現しかできないけれど、優しい、ふんわりとした雰囲気の立つ顔立ちで、髪はお日様に透けるような蜂蜜色。


茶色とはまたどこか違う、柔らかそうな髪をしていた。




「あっ」



声を発したあと彼は小さく微笑んだように見え、声や顔立ちからは連想され難いくらい、思っていたより背が高いことに気付いた。



「イチ」




また、もう一人いるであろう人の名前を呼ぶ。


彼の腰には彼のものではない手がしっかりと添えられていて、そのイチと呼ばれるもう一人が彼を掴んでいることがわかる。




「イチ、手、離して」


「やだ」



困ったようにふと吐息を零した彼は、勝手にイチの手を引きはがした。




ということは、彼が“ロウ”?





「取り敢えずキオ、中入れば?」



真後ろから見上げた声が通る。



「人間除菌していい?」

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