第16話
ちゅ、と肩甲骨の辺りでリップ音が響いた後、チク、と同じ箇所にあまい鈍痛が走って眉根を寄せた。
骨に直接、唇の感触があるようで怖い。
するとほぼ同時に目前のドアが開き、さっきこの背にいるであろう男の人に『キオ』と呼ばれていた、銀に朱の人が現れる。
「あ」
私だけが声を落とす。
彼はすっかり暗くなった夜空を背景に、まるでゴキブリさんの死骸でも見付けたかのような表情を浮かべていて、左手には消臭スプレーが在った。
外で何していたんだろう。
「何、しているんだ」
おお。
お互い同じことを思ったらしい。
「しゃ、がんでる」
「背中にきすしてる」
「はあ……!?き、きったな……有り得ないマキ」
“マキ”
ここで初めて耳にしたそれは、恐らく、この淡茶の彼の名前だった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます