第14話

お風呂から上がり、何か当たり前のことをしようとしたはずなのに叶わなかった。


足りない物にはっとして立ち尽くす。




着替えが入っているバックパック、さっき玄関に放ってもらったままだ……!



どうしよう、パンツすらあそこに……。


パンツ……!




履けないと思うと余計に履きたくなってくるのがパンツだった。



しかし、呼んだところでパンツが飛んでくるわけもなく。



一つに括り上げた髪から落ちる雫が背筋を伝って、その冷たさに身を震わせ、真っ裸のまま冷静に悟る。




パンツより、タオルが先じゃないだろうか。




辺りを見回すと、浴室から脱衣所に出てすぐ左手に扉付きの棚があり、如何にもなそれに寄って扉を開けると、そこには綺麗に陳列された飴色のふかふかそうなタオルがあった。



やったと心の中で呟いて一番上から手に取るとタオルはやっぱりふかふかで、思わず顔を埋める。




タオルからは、やさしい柔軟剤の香りがした。

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