第4話

翌日の夕方。


バックパックを背負った私の足はとある森の中の立派な洋館の前に辿り着いて在って。




顔は真顔のままで突っ立ち、三分を口笛吹いて過ごしていた。




「カップラーメン」



と、呟いたところである。意味はない。実は目の前の建物が凄くてどうしようというのが本音である。




右手には手汗でしわくちゃになった、講師からの住所が握りしめられていて。


左手首の腕時計を目にして「六時半だ……」と独り言を続けた。




後ろを振り返ってみる。


夏だというのに蝉の鳴き声すらしない。



遠く青紫色の空では切り絵のような鳥が浮かんでいるのみ。




せめて鳴いてほしいものだと思いつつ迫るような藍に背中を押され、洋館の周りを回って見つけた玄関へと足を進める。




縦に二メートルほどの大きなドア。



そこにインターホンなどはなく、古風な鉄の輪っかがたったひとつ。




私はそれに触れ、ひんやりと冷たい感触を得たまま二度音を響かせた。

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