第13話

「ていうか、思ったより」




そう呟く男に「誰?」と問うと、「綺麗な顔してるけど、毒があるみたいで」と続けられる。



「どこかに所属してるの?」





それに瞬きをして、“いつもの”とは違う雰囲気を感じる男を注意深く視界に捉える。




「だったら何か」




「へいき、“いつもの”とは違うよ」




男は人懐こい笑顔を浮かべて慌ただしく肩から掛けていた鞄を探り、一枚の名刺を差し出した。




「突然ごめん、僕は乙姫 庵といいます。この事務所の経理や俳優のマネージャーをやっている者で」





そのとき羽織っていた上着のポケットに入れていたスマホがバイブで揺れ、俺はそれに小さく目を向ける。





それを目にして「では、また夜に」と言い残した男は、人混みに消えた。

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