第9話
申し訳なさそうに見せられた紅い舌。
さくらんぼの茎は、これほどまでかと叫びたくなるほど綺麗に結ばれていた。
ひゅう、と囃し立てる環が「流石」と一言。お前はもう本当黙ってくれ。
ぶるぶると震えるイマイチを座ったまま見上げるルイの慈悲に満ち溢れた眸が、余計に彼を可哀想な子にさせる。
もうやめてあげてくれ。
また環の悪魔の笑い声が事務所に響き渡る。
何でこんなに楽しそうなんだ。大人怖。悍ましいほど腹黒い。
丁度そのときドアが開いて、廊下から小柄な丸眼鏡が顔を覗かせた。
「頼むから仕事…」
既に死にかけている声。
超絶性悪人泣かせな、ライターに。
顔の割に口の悪い、メンズモデルに。
笑顔の演技が称される、俳優に。
この人は、いつもこうして懇願している。
その後ろから続いた社長が、私に目を合わせて言った。
「波音、もう下で相沢さんが車停めて待ってるから行っておいで」
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