第8話

「イマイチ、まだ?」



くす、と首を傾げる環は本当に超絶性悪。


誰もこの人が書く話が、今一番人を泣かせるものだとは思わないだろう。





「っ」



ガチ、と痛そうな音がしてすぐ、イマイチの傍のソファに腰掛けているルイが瞼を閉じた。




「御門。舌咬んじゃった?」




イマイチは首を縦には振らない。当然だ。



瞼を開くルイは優しく微笑んで、「舌、見せて」とイマイチに追い打ち。




大人しく言う通りにするイマイチの舌はやっぱり残念なことになっていて。




途端に悪魔のような笑い声を上げる環。



一番生き生きした瞬間のようだ。



でももう黙った方がいいと思う。


国の平和のためにも。





「…っ、ルイは、できたの?」




最期の負け惜しみでかそう言ったイマイチに、目を丸くするルイ。



ああもう、目を覆いたい。





「……ごめんね、御門」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る