第7話

「は、」


眉を顰めるイマイチに、環はいつのまに食べていたのか既に茎が結ばれたさくらんぼを見せ、示す。



“できるよな?”



明らかにそう挑発する環は今日も元気に意地悪い。



意味の取れたイマイチは顔を真っ赤にする。




それから取り損ねていたさくらんぼを手にし、それを口に運び入れた。




「ルー、さくらんぼの茎、結べるとなんだっけ」



「キスが上手い」



「そうだったっけぇ」




可哀想に大人二人に弄られるイマイチはぐ、と堪えて口を動かす。



あーあ。




私はドア横にある宝箱みたいな縦開きの冷蔵庫を開き、中から水の入ったペットボトルを取り出してキャップを捻る。



この芸能事務所は、各自自分の好きなものを置いていいことになっている。



この変わった冷蔵庫が誰の持って来たものかは知らないけど。





膝に肘をついて頬杖をつき見上げる環と、ルイ、イマイチを見渡して苦笑。



何となく黒い要素の多い服が、何を言わずとも彼等の腹の黒さを物語っているような気がした。

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