第6話

・・・



芸能事務所のグレーのソファに腰掛け、某有名漫画を手にしてへらへらと表情を緩ませる目の前の彼が、対角に立っていた今市に声を掛けた。



私はそれと同時にソファから席を外す。




事務所の中央にあるグレーのソファは、優に六人座れるくらいのものが向い合って並べられている。


その間には白木のテーブル。



部屋の端には社長デスク。主である社長は奥の会議室に行っていた。




ドアに最も近いソファの端からテーブルに足を乗せる彼がそれを下ろし、漫画をテーブルに置いた。




声を掛けられた今市は、嫌そうな顔をして言う。





「環くん、待てって犬じゃねぇんだから」




毛先に向かって淡くなる茶色のグラデーションパーマが嫌に洒落るのが今市 御門(Imaichi Mikado)。




その隣で陽に透けると紫になる髪を隠すようにくす、と笑みを浮かべたのが犬飼 涙(Inukai Rui)。




サラ、と落ちるような濃茶の髪が耳に掛かって目を愉しそうに細めたのが立花 環(Tachibana Tamaki)。





「はいはい、犬みたいに可愛いイマイチクン」



「何」




表情を歪ませ、吐き捨てるように先急ぐイマイチに、環は舌を出した。




「?」


「さくらんぼ。茎結べるだろ?」

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