第37話

「それで、」



天井を見つめながら思い出して笑う亜子に、当時の太郎を思い出す。あのときは小さかった太郎。



「靴履いてる時に、あたしの黄色い長靴に目が留まったらしくて、『なんだよこれ!姉ちゃんが好きな可愛いのじゃないじゃん!!』って、今更」



うくく、と吹き出す亜子につられて笑う。亜子は笑って出た涙を拭って続けた。



「…だから買ってきてくれたらしいんだけど、あたし、そのことも楓がくれたケーキも凄く嬉しくて、何か皆からいっぺんに祝ってもらえたみたいで、長靴もケーキも暫く手つけられなかったんだ」




亜子は俺の目を見て、ありがとね、と呟いた。




その時のことも、今日のことも。


そう言われたみたいだった。



お礼を言うのは、俺の方なんだけど。




「…あとね」



亜子は、小さく小さく、掠れた声で付け加える。



俺は掠れた声に少し心配になって、亜子の額にかかる前髪に触れる。





「弟が三人、って話。あれもう、弟は三人じゃなくなっちゃったんだね、楓」




「……、」




亜子が何を言いたいのかが分かってしまって、俺はどうしようもなく彼女が愛おしくなって。



「ばか」





三度目の“ばか”を愛おしさに変えて、



亜子の額にキスをした。













あの日 俺の小さな世界に降った雪は




約束もしてないクリスマスの度に





愛おしい彼女を 連れてきてくれている












(X'mas dome、)

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