第32話

言わないとか言ったくせに俺のお願い事を見たとは思えないから、何か直感でそう言い当ててきたのだろう。


俺はそんなことも考えずに、慌てて紙を見直す。





そして、『やろー』をバツで消した。




それから思い出して、『おれの分。』の後に『じいじとばあばのも。』と付け加えた。



あと、『きんぎょの「めだか」にも。』と。





――当時のおれは、なぜか夏の祭りで捕ってきた金魚に“めだか”という名前を付けていた。






「かけた!はやて、そこ?そこにかざればいいんだよな」




無視をする颯はどうしてもカーテンレールに手が届かず。

結局その後それに気付いた母さんが俺のと颯のをカーテンレールに吊るしてくれた。



颯はその後しばらくの間ム、としていた。




俺はその直後、なにを思いついたのか母さんにチョコレートケーキがいい!と叫んでいた。













クリスマス、当日の朝。




父さんと母さんの間に挟まれて寝ている布団で目を覚ました俺は、周りがちょっと騒がしくなっていることで目を開けた。



いつも俺の右隣で寝る父さんが、反対側の颯のところにいた。


と思ったら、颯を抱きかかえる。






まだぼんやりと目を擦る俺のところにジャンパーを羽織った母さんがやってきて膝をつき、俺の額にひんやりと冷たい手の平を当てた。




「あ、楓、起こしちゃった?楓は熱ないみたいだね」



微笑んだ母さんがゆっくりと言う。



「楓、颯がちょっと熱があってね。お父さんがお仕事行く前に病院に連れていってくれるから、そしたらお母さん、颯とまたすぐ家に戻ってくるから」

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