第31話

「…とどかない」



ム、と自分の小さな足を見つめる椅子上の颯をよそに、俺はテーブルに置いた折り紙の白い裏を見つめて硬直した。




おねがい、ごと。



やばい、おれ、すっかりわすれてた!



かあさんがクリスマスのケーキなにがいいって言うから、おれ、そればっか考えてたんだった。


どうしよう。



早くしないとサンタがきちゃう!!






「は、やて。はやて」




あわあわと動揺した俺は、まだ背伸びを頑張っている颯に助けを求める。颯は再び踵を椅子上に戻した。



「これってなにかげばいいの」




「ほしいものとかだろ」



「え、え、はやては何てかいたの」




「言わない」





「何で!」


「言ったらくれなくなるかもしれないから」



「え、そうなの!?」



動揺を極めた俺はとにかく急がないとサンタのやろーが来てしまうかもしれないと、見えない何かに追われ、咄嗟に油性マジックペンのキャップをとった。




『サンタやろーへ




にくくれ。


とうさんと、かあさんと、はやてと、おれのぶん。』




そこまで書いていると、それを見たのか見ていないのか、颯が


「かえで、サンタやろーとかだめだぞ」


と言ってきた。



「え」



「こなくなるかもよ」


「え!!」

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