第28話
「イブに風邪って…ばか」
――――俺は帰ってきたばかりなのに、だとか、明日クリスマスなのに、だとかそういう、色々な意味を含めた『ばか』を亜子に呟いた。
こっちを見た、掛け布団を鼻くらいまで被った亜子が反論しないところを見ると、自分でも幾らかそう思っているらしい。
「帰って来た日は風邪なんて引いてなかったよな」
手袋から大して温まってもいない手を抜き、首に巻いていたマフラーをぐるぐると取りながら亜子の傍へ寄る。
こく、と亜子は頷いた。
「かえで…ほっぺた紅いね。鼻も」
何か弁解するのかと思いきや、ベッド脇に膝をついて傍に寄った俺へ手を伸ばしたそうに呟いた。
「ばか」
俺はもう一度繰り返す。
「急いで来てくれたんだ」
その問いに、頷くことはせず口を開いた。
「太郎が教えてくれた。から、ちょっと焦った。…てか、そんな遠くもねえだろ、家」
亜子が、何か知らねえけど謝りたそうな目をしてるから。
早く頬と鼻頭の紅さが引けばいいと思った。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます