第28話

「イブに風邪って…ばか」





――――俺は帰ってきたばかりなのに、だとか、明日クリスマスなのに、だとかそういう、色々な意味を含めた『ばか』を亜子に呟いた。



こっちを見た、掛け布団を鼻くらいまで被った亜子が反論しないところを見ると、自分でも幾らかそう思っているらしい。




「帰って来た日は風邪なんて引いてなかったよな」



手袋から大して温まってもいない手を抜き、首に巻いていたマフラーをぐるぐると取りながら亜子の傍へ寄る。



こく、と亜子は頷いた。





「かえで…ほっぺた紅いね。鼻も」





何か弁解するのかと思いきや、ベッド脇に膝をついて傍に寄った俺へ手を伸ばしたそうに呟いた。



「ばか」



俺はもう一度繰り返す。




「急いで来てくれたんだ」




その問いに、頷くことはせず口を開いた。


「太郎が教えてくれた。から、ちょっと焦った。…てか、そんな遠くもねえだろ、家」





亜子が、何か知らねえけど謝りたそうな目をしてるから。




早く頬と鼻頭の紅さが引けばいいと思った。

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