第27話

大学二年生のクリスマスイブの朝。


冬休みに帰省していたあたしは実家に着いて数日で熱を出し、ベッドに籠っていた。



すぐ傍の窓の外を見れば雪が降っている。



ホワイトクリスマス?


あ、でもクリスマスは明日か。

じゃあホワイトクリスマスイブってことになるのかなあ。


なんて、普段だったら笑ってしまいそうなことを考えていた。




疲れが出たのよ、そう言ってお母さんがかける重くてぶ厚い掛け布団に圧し掛かられ、身動きもとれないあたしは小さく咳をする。




こんなこと初めてじゃないだろうか。


乳児の知恵熱じゃあるまいし、子どものようにクリスマスを楽しみにしすぎて発熱したわけでもないだろうし。



これじゃあ何だか、ただ単に運が悪いだけ。





あたしはもう一度咳をして身体を起こし、傍のテーブルに置いていたマスクをつけて布団を被った。




暫く静かに雪の落ちるのを眺めていたが、やがて階段を駆け上がる忙しない足音が聞こえてくる。


それから間もなくノックもなしにドアが開けられた。





「亜子、風邪!?」





地毛で明るい髪の上に、見てすぐ今降ったばかりの雪だと分かる白い粉氷が積っている。



息を切らした頬と鼻頭が紅い制服姿の楓は、高校二年生になっていた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る