第22話

それに気付かなかったのはあたしで。


気付けなかったのもあたしで。



毎朝、そうやってあたしを。


後ろからあんなに、大事そうな目で見ていたのかなって



思うと、楓は寂しそうで。


切なそうで。




楓は小さい頃から、『大好きなもの』には


同じ笑顔を向ける。



―アイスとか。


―柔らかいクッションとか。





…あたしは。




あたしはいつも、楓の『大好きなもの』だった――…。





――――――――……




亜子は風が柔らかく吹く中で、俺を見上げながら泣いていた。




「でも、楓、言ってたよ…」



震える声で携帯に向かって言う。




「『亜子に好きって言われるやつは可哀想だ』って言った…」



「!」

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