第23話

そう言って、子どもみたいに泣き出した。




「…亜子」




亜子、



亜子。




ごめん。




俺は携帯をその辺に放り投げ、部屋を出て階段を駆け下りる。





「あこ、」




道の端っこで零れる涙を拭っていた亜子は、引き寄せると思っていたより線が細くて。





「ごめん。ほんとに…ごめん…っ」





「っ…あたしも…好きだったよ…」




俺は、小さく目を見開いて、囁いた。



「…今は」




「……」




亜子は俺の首横で黙った。


俺は、更にぎゅっと抱きしめる。

亜子はびく、と肩を揺らした。



「…あのさ、あんなの嘘に決まってるだろ」



「……」


「信じてない?…俺。亜子に好きって言われたいんだよ」




「!!」



「言っとくけど、嘘じゃないよ?」





「…。……調子良すぎ…」





そう言って顔を見せて、真っ赤な目元の下でにっこりと笑う亜子。




「亜子、俺のことどう思ってる?」









ちゅ







「……まあ、これほどには、想ってる」









「…ッえ!?……え!?」







やっぱり押されて真っ赤になる俺の傍で、亜子は、凄く幸せそうに微笑んだ。

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