第21話

『亜子、』


あたしは電話越しの楓の声が、昔より少し低くなっていることに気付いた。

男の人の声に、近付いているんだ。





『一回しか言わないから、聞けよ?』




「?」









『亜子。ずっと好きだよ』








……え?



スキ?




何て言ったの?



あたしに?




訳も分からないまま溜まる涙に、楓を映す。





楓は――…




楓は。



愛しそうに、大事そうに、…そして少しだけ切なそうに、あたしを見ていた。





「…っ」




思えば楓はいつも


その目であたしを見ていたかもしれない。

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