こくはく

第20話

「…あ、」


窓からすぐ下の道に見えた影。


小さく下を向いて、俯きながら歩いてくる。







――――――――……




「…亜子!」





え?


あたしは呼ばれた名前に周囲を見渡す。




「上だ、ばぁーか」




ぱっとボケた顔で上を向くと、そこに。



愛しい…ううん。


“愛しかった”楓の、笑顔。



窓から両腕を出して、顔だけを見せている。




終わったはずなのに、もう想わないと決めたはずなのに、あたしの心はその優しい笑顔にきゅん、と響く。


素直に、ドキドキと奏でる。





「な、なに…」



そう呟くと同時に、携帯の着信音が鳴った。


「?」




携帯の表示を見ると、そこには[かえで]の表示。


上を向くと、楓は耳に携帯をあてている。



あたしはそれを見てゆっくりと、耳に携帯をあてた。

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