第16話

「亜子のこと、好きって言ったらどうする?」




亜子は一瞬目を見開いたように見えたけど、すぐに微笑んだ。



「無理。弟みたいなもんじゃん、楓なんて」



「中学生なんて子どもだしさ」


そう、亜子は笑って簡単に言う。





――…そっか。





『無理』


感じたことのない痛みが、突き刺さった。



辛い、


苦しい。





「俺も。亜子なんて年上すぎる」


「あんたね、失礼すぎ。ま、だね。有り得ないこと考えるのやめよ」



2人の間には重い沈黙が流れた。



「じゃ、俺こっちだから」


「うん」




歩く度にズキン、ズキン、と胸が苦しくなる。




聞かなければよかった?


聞かなければこんな風にならなかった?



でも。


聞かなければ、俺たちはずっとこのままだった。



だから、聞いてよかった……かな…?




もう、訳わかんねぇ…。

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