第11話

腕を引かれたから、どうしたの、と首を傾げる。

相手はぽっと頬を赤らめた。


な、何!?




「あの「亜子!!」



「…?」




何か言い掛けた男子の後を追うようにはっきりと呼ばれた名前。視線を向けると、今度は本物の楓だった。



「お前何やってんの?」




え、何って。


あたしも分からないんですけど!?




「え…と…?」



「もういい」





は…?



はぁあああ――!?





フン、と顔を逸らして早足で帰って行く楓。





「…あ」


「ごめんね、また今度」




そう言って握られていた手を振り解き、あたしも走り出す。



別に、追いかけてるわけじゃなくて。




家が同じ方向なのもあるし。


どこか、急かされたような気分だし。



それから、それから。



あたしは走る足をよそに、頭の中で真っ当な理由を沢山考えた。

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