第6話

「ふふ、」


そう口を押さえて、とても高校生の娘がいるとは思えない、愛らしい笑顔で笑った。


そんなおばさんの笑顔を、俺は赤くなる頬のまま見つめていた。




「あ、じゃ…いってきます!」


「いってらっしゃい」





とりあえず、亜子に謝らないと。





亜子は俺が走っていけば普通に追いつくところにいた。



一軒家が立ち並ぶ道。


ちらほらと登校する小学生から高校生までが見える。




「っ亜……」




亜子に追いつこうと思ったのに。


数メートル後ろで、俺は走るスピードを緩めた。





「……」


正直、この時が1番辛い。




亜子との僅かな“歳”の壁を感じるとき…っていうか。



自分の手のひらを見つめ、グッと握る。




亜子は、俺の知らないところで笑って、泣いて、怒って…。


もしかしたら、俺よりも全然良い奴と…。




…………。

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