14年後

第4話

――――――――……




「ってぇ…」


「最低!最悪!もう知らない!!」





――俺は、大きな平手打ちの痕を頬につけた。





「…亜子」


「話しかけないで!出てって!!」


「待っ」



亜子の真っ直ぐで長い髪を触ろうと手を伸ばす。


でもそれは、するりと抜けられてしまう。




――…あ。


やばい予感がする。



俺は大人しく亜子の部屋のベランダから出て、自分の部屋のベランダに帰ることにした。







ミーンミーンミーン


蝉が忙しく鳴き続ける、夏。




ピンポーン



チャイムを鳴らすと、向こうから走ってこっちに来るスリッパの音が聞こえる。



ガチャ


「あら、楓。おは「いってきます」




ドアの取っ手を握ったまま言葉を繋ごうとしたおばさんをどかし、亜子が玄関から出てきた。

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