第122話
自分の通っている大学図書館の中で、客観的/事実上の異性と手を繋いでいることに頭の悪い感覚を覚えていた。
これ、嫌悪感?
チュウガクセイと……。
笑ってしまうね。
けれどその頭は至って冷静で、ボクの存在意義だとか価値だとかも含めてぜんぶ、只々阿部エイトを…
それができないから阿部カンナを?
ボクと同じように、いいやもしかしたら嬉しいことに優越感溢れることに、ボクよりもっと、もっともっともーーーーっと酷くされているかもしれないその女、をグッチャグチャに傷付けたああーいという欲求。
それだけ。
ムカつく。どこの誰かも知らない、見たこともないような奴を引き合いに出されて比べられて嗤われて?オメェの所為だよ、とさえ思ってくる。
『自分で手当て』?だから何だよ。ボクの分までもっと、傷付けばいいのに。そうしたらコッチに回ってこないかもしれないのに。
オマエの兄だろ。何でボクが。何で。
「ええと何だっけ、相良さんの親友さん」
白々しく。忘れもしない名前を探す。
「みーぞーれーくん!私の親友の名前、緩菜ちゃんね!?あと相良さんやめてっていっているでしょ!?ちゃんと柘榴(ザクロ)って呼んでって」
「アー、そっか。そうだったね。ごめんねザクロちゃん。カンナちゃんのこと探そっか」
興味なくってごめんね。
どうでもいいんだ君のことなんか。初めて会った時から、ずっと。ボクは子どもの手から逃れて広い図書館の中を歩いた。
阿部カンナ、阿部カンナ。
特徴は――――――
「っ」
彼女と同じチュウガクセイで。
背が低いらしく
中身と同じ。脆そうで
今にも、折れてしまいそうなほど――…
横切った背の高い本棚と本棚の間、奥の方に。陽差しを受けて柔く跳ねる毛先が映った。
横顔。
額の左側には痛々しくガーゼが貼られていた。
ボクは自分のオナジバショにそっと触れる。
ピリリと皮膚が裂かれるような痛みが走ったけれど上げた視線の先の彼女が同じ、左側の首筋にもそれより目立たないガーゼを貼っているのをみていた。
思わずみつけた、と口先が動いた。
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