第121話
「…くん」
阿部 カンナ。
阿部カンナ。
「霙くん!」
「ワッ」
「もーー!何回呼んでも四週間前から大好きな高級キャットフードじゃなくて野良猫と同じ御魚しか与えられなくて不満ーな箱入り猫みたいな目して!!」
「……え?」
「ぷんすぷんす」
「……ハハ、ごめん」
ボクは今日、彼女から阿部カンナを紹介される。
ああ違うか。
ボクが阿部カンナに紹介される?
どっちでもいい。
どうでもいいから早く、早くアイタイ――。
大学を出るときそこにいればいいと言われ、どうしてか聞けば阿部カンナはどういうわけかたまにうちの大学図書館を利用するといった。だから自分たちがうちの大学にくると。
しかし三月の雪解け時期(どき)に図書館前で彼女を待ってみるも姿が見えたのは、エサの方だった彼女だけ。
阿部カンナは、先に中に入っているという。
何か用事があるのだという。
「ほら」
中へ入ろうと、エサの方の彼女の冷たい手がボクの指先に触れた。
ああ、うん。
ボクも笑顔で返す。そうして広い広い図書館の中に足を踏み入れた。
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