第120話

――見つけた。





「え」






ボクは



さっき一度払い退けた彼女の湿った手に自分の手を重ね


眸を惚けさせる彼女の事など一切考えずに


昨日アイツに 切られて沢山


血の出た舌を、彼女の舌に絡めた。






「……っん、ぅ霙く」



「待って。逃げないで、もう少し。」


「んん…んーー」




その時大学四回生だったボクと中学一年生だった彼女。



離す唇と唇の間に伝う銀の糸。


…みたいな関係だと思った。





「急にごめんね相良さん。嫌だった?」



「……う、うん嫌じゃ、ないけど…」




指先でそれを拭いながら、目の前の彼女のとろんとした眸を見つめながらボクはただ、今のこの世で一番怖い存在がいつもボクと比例して嗤う――この世で一番憎い存在のことを考えていた。





『 “ カンナ ” 』






どんな子だろう、って。

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